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第21章(3)響夜side
21-3-5
しおりを挟む本当は、聞くまでもなかった。
話をしようと部屋を訪れたあの時。扉を開けて、目に入ってきたサクヤと弥夜の姿は……。まるでかつての、僕とサクラの時間を見ているようだった。
僕の幼少期の、唯一の、幸せだと思えた時間ーー。
それを思い出して、あの時のサクラのような笑顔にサクヤをしてやれるのは、僕ではないと思った。
「……弥夜。
明日、また雪の所に行け」
「!……え?い、いいんですかっ?!」
「ああ。ただし、勉強をすませてからだ。
それと、ただ遊びに行くだけじゃねぇからな。……、……お前に、頼みがある」
僕には、サクヤの表情を曇らせる事しか出来ない。
だから笑顔にしてやる為なら、それが例え自分の為に微笑ってくれなくても……いいと思った。
「ーー……わかりましたっ!やくそくするです!!」
僕が"頼み"を言うと、弥夜は笑顔で頷いて自分の右手の小指を立てて差し出してくる。
その小指に自分の小指を絡めた瞬間。初めて、弥夜に触れたような気がしてた。
……
…………。
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