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第21章(3)響夜side
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しおりを挟む「ーーそんなのっ、無理だよッ!!」
ーー分かってたよ。
サクヤが僕の事を嫌ってる、って。
「そんなの、無理に決まってるじゃない!
っ、何言ってるの……?!おかしいよっ!!
サクヤが僕の事を恋愛対象になんて、見る筈ない。
サクヤの心には紫夕さんが居て、僕がその代わりになれる筈がない、って……。
それなのにーー……。
「っ、ハハッ……。
何だよ、これ……。思ってたより、くるな……」
心がズキッと痛んで重い。
僕の言葉に感情的になって首輪を引き千切ろうとしたサクヤを殴った左手を見つめながら、廊下の壁に背をつけてズルズルと床に座り込んだ。
サクヤを殴ったあの後。
騒ぎを聞きつけた朝日達に仲裁に入られて、奴等に後を任せた僕はサクヤの部屋を後にした。
……こんなに、自分がショックを受けるなんて思ってもいなかった。
当たり前の事を。想定内の事を言われて心を乱してしまう程に、自分の中でサクヤに対する気持ちが大きくなっていた事に気付き、僕は溜め息を吐いて頭を抱えた。
子供がいる事も……。弥夜の存在がバレた事にも、分かりやすいくらいに動揺を隠せなかった。
自らの魔器である鬼響に心が汚染されていたあの頃、親父に言われるがままに作った子供。それが、弥夜だった。
親父が用意した、複数人の女の誰かが産んだ子供だから顔だって覚えていない。
僕の母親同様、人型魔物を産み出すには相当母体に負担がかかる事から、弥夜の母親である女もすでに亡くなったと聞いている。
「響夜君。君の、息子だよ」
ある日突然、朝日から産まれて間もない赤ん坊を手渡されて……。そこから、何となく、今日まで育てて来ただけの存在だった。
……僕には、分からない。
サクヤが腹の子を、あんなに愛おしそうに大切に想っている気持ちが分からなかった。
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