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第21章(2)雪side
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しおりを挟む……ーー無理。
「そんな訳ねぇだろ?
こっちが相手に何かを望むなら、こっちはその相手が更に望む、相手にとって利益のある条件を呑まなきゃいけないんだよ」
っ、無理……。
無理だよ、そんなの……っ。
「そんなの、今回に限らず物事の基本……」
「ーーそんなのっ、無理だよッ!!」
オレは、膝の上で拳をギュッと握り締めて叫んだ。
「そんなの、無理に決まってるじゃない!
っ、何言ってるの……?!おかしいよっ!!」
目を真っ直ぐ見つめてそう訴える。けど、響夜はただ、真顔でオレの事をじっと見ていた。
この時オレは、紫夕以外の人に抱かれるのが無理、とか。相手が響夜だから無理、って問題を言いたかった訳じゃなかった。
それより先に浮かんだ感情は、
もう自分達のような子供を増やしたくないーー……。
ただ、オレは嫌だったんだ。
そんな風に産まれてきた子供が……。自分の子供が、また橘さんの研究の玩具にされる事が……。
だからつい、感情的になって、響夜と言い合う事になってしまう。
「響夜はそれでいいのっ?弥夜君のお母さんが……っ、奥さんがいるんでしょっ?好きな人がいるんでしょっ?それなのにっ……」
「ーーいねぇよ、そんな奴」
オレの言葉に、響夜は今までよりも更に強く、冷たい口調で言った。
「ほんっと、おめでたい奴だな。
世の中の全員が、好きな奴と結ばれて、幸せになって、子供作ってると思ってんのか?」
「ハッ」って鼻で笑ってベッドから立ち上がった響夜は、オレの正面に歩み寄って来ると、冷めた視線で見下ろす。
「親父に言われたからだよ」
「……え?」
「「次の被検体を作れ」……。
親父が命じたから抱いて、作って……。その結果、弥夜が産まれてきただけだ」
淡々とした、声。
響夜の言葉が、オレには理解出来なかった。
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