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第21章(2)雪side
21-2-3
しおりを挟むか、感じ……悪かった、かな?
そう思いつつも、もう一度座り直す勇気もなかったオレは、俯いて黙り込む。チラッと響夜の様子を伺うと、別にこちらを気にして見ている感じもなくてホッとした。
そんな感じで座っていると、暫くして響夜が口を開く。
「……まずはこの間の話の、結論だけ言うとな」
「う、うん……」
「お前が子供を産む事は、親父、承諾したよ」
「!ーー……え?」
響夜の言ったまさかの言葉に、オレは思わず、「え?」っと、聞き返してしまった。
橘さんが、オレが子供を産む事を認めてくれたーー……。
その事が信じられなくて、間の抜けた表情を浮かべるオレに、響夜は言葉を続ける。
「さっき正式に通達が出た。
朝日を筆頭にしたここの最強の医療組織がお前の健康管理に付いて、子供が無事に産まれるようサポートしてくれる。
興味本位の目で見るヤツ等も居るが、腕は確かな連中ばかりだから、そこは安心しろ」
「っ、……」
響夜の言葉に、喜びと……。何より、心から安堵して、オレはまた泣きそうになった。
無事に、お腹の子を産めるかも知れないーー。
その、希望のような報告に、諦めないで良かった、って思った。
そして、オレに「諦めるな」って言ってくれて、橘さんに掛け合ってくれた響夜に感謝の気持ちでいっぱいになった。
やっぱり、本当は優しいんだ……っ。
そう思って、オレは今度こそちゃんとお礼を言おうと思った。響夜に、「ありがとう」って……。
でも、口を開こうとしたオレに、響夜が言った。
「ーー但し、一つ条件がある」
上手い話には、裏があるーー。
世の中そう上手くはいかない、と。現実を突き付けられる。
オレ達の事を研究の道具にしか想っていない橘さんが、そう簡単にお願いを聞いてくれる筈なんて……なかった。
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