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第21章(1)雪side
21-1-2
しおりを挟む人型とは言っても、魔物の血が流れている自分ーー。
もし、赤ちゃんが産まれた時に魔物の姿だったら……。って、それだけが心配だった。
愛す自信がないからじゃない。
お腹の子がどんな容姿をしていても、オレは絶対に……。オレだけは、愛してあげる。
けど。
赤ちゃんの将来を考えたら、絶対に容姿は人間の方が良い。
出来るのなら、オレの血なんて一滴も受け継がなくていい。
魔物の血や力なんて……。悪い物は全部オレのお腹の中に置いて、出て来てほしい。
「……悪い事は全部オレに任せて、君は自分が幸せになる為に産まれてきてね?」
紫夕に似て元気で健康で、誰もが人間だと疑わない容姿で産まれてきてくれたら……。オレは、それだけで良かった。
そう。
例え、一緒に暮らせない未来がきてもーー……。
幸せな感情と同時に浮かぶ、悪い考え。
「だから、お願い……。
っ、お願いだから……それまで保ってよ。オレの身体……ッ」
小刻みに震え始める自分の身体を包むように抱き締めた瞬間、思わず溢れる不安。
自分の身体の事だ。
朝日先生に説明されたからじゃなくて、自分が本来子供を産めるような身体じゃないのも、寿命がそんなに永くない事も感じてる。
なるべく考えないようにしていたが、赤ちゃんの成長を目にしたら……。喜びと同時に、そんな想いが湧き上がってきてしまった。
っ、……泣かない。
絶対に……泣く、もんかッ…………。
もう泣かない、って決めた。
強くなるんだ、って……。紫夕がいなくても、一人で頑張るんだ、って。
……でも、…………。
でも自分がここに来て、赤ちゃんのエコー写真を初めて見たあの瞬間以外、心から笑っていない事にオレは気付いてた。
こんなんじゃ駄目だ、って。
一人でも笑えるように強くなりたい、って。
似たような状況下の中で、オレを産んで育ててくれた母さんみたいになりたい、って……。
まさか母さんが、誰かに支えられて、本当の笑顔を取り戻していたなんて知らなかったオレは……。そう思ってた。
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