スノウ2

☆リサーナ☆

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第20章(4)紫夕side

20-4-5

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「ごめんね、驚いたりして……。
悪く思わないでおくれ。サクラさんがこんな田舎町では見た事ない美人さんだから、驚いただけなんだよ」

そうゆきに声をかける亜希あきさんは、さすが和希かずきのお袋さん、と俺でも納得してしまう雰囲気だった。
優しい声に、優しい笑顔。
ゆきを不審がったり、興味本位にする様子は全くなくて……。ゆきは、戸惑っていた。

寂しい、心細い想いをしていたゆきが、自らに優しくしてくれる人を突き放すのはとても辛い選択だっただろう。
握り締めている左手の薬指にはまった、俺とお揃いの指輪を右手の指で一瞬触れる仕草から……。きっとゆきは、俺を選んでくれていた。

俺が自分の事でいっぱいいっぱいだった時も、ゆきは自分の事より俺の事ばかり考えていてくれたーー……。

それを目の当たりにした俺は、自分のあまりの身勝手さに、後悔を通り越して失望感すら抱く程だった。

……けど。
俺の本当の後悔。斬月ざんげつが、"本当に俺に伝えた事"は、この先にあった。

「コレ、お口に合うと良いんだけど……。
昨日この子達がお世話になったお礼に、受け取ってくれるかい?」

なかなか言葉を発せずに居たゆきに、そう言った亜希あきさんがバスケットからお皿に乗ったお菓子を取り出し、目の前に差し出した。
すると、その直後。

「っ?……ゆきッ?!」

俺は、思わず名前を叫ぶように呼んでしまった。
何故なら突然、ゆきが自分の口を手で押さえながらその場を駆け出して行ったからだ。

ゆき?!っ……ゆき!どうしたんだッ?!」

これが斬月ざんげつの見せている過去の出来事だなんて一気に頭から吹き飛んで、俺は慌ててゆきの後を追う。
ゆきが駆け込んだのは、トイレ。屈み込んで、便器の中に苦しそうに嘔吐していた。

「……っ。
やっぱり……まだ具合、悪かったんだな」

その様子に思わず摩ってやろうとした自分の手がゆきの身体からすり抜けて、俺はようやくこの状況が現実ではない事を思い出した。
辛そうに息をする背中を、摩ってやれないこの状況が恨めしい。
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