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第20章(4)紫夕side
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しおりを挟む「サクラ、かぁ~。きれいななまえ!
ぼく、さくらのはなすきだよ!」
「わたしもすき~!
きれいで、おねえさんにぴったりだね~!」
子供達にそう言われて、雪は少し罪悪感を覚えるような表情をしながらも、俺の瞳には何だか嬉しそうに映った。
子供、好きだもんなーー……。
守護神の本部で、マリィの手伝いをしていた時の雪の様子を思い出す。
雪はコテージの中から救急箱を持ってくると、鈴夏の傷の手当てをしてあげて……。その後、二人とコテージの外で遊んでいた。
「はい、出来た」
近くに咲いていた花を摘んで冠を作り上げる雪を、二人は「すご~い!」って笑顔で喜んで褒めていた。
雪、嬉しそうだな……。
子供達に囲まれて過ごす雪の表情は、本当に本当に優しくて、綺麗だった。
「ね?サクラちゃん、これ、もらってもいい?」
「あ~!ずるぞ~!ぼくもほしい~!」
「あぁ~、喧嘩しないで?もう一つ作るから」
そんな子供達のワガママにでさえ本当に嬉しそうに接している雪を見て、俺はものすごく泣きたくなった。
魔物である雪が、どれだけ寂しい想いをして、言えない我慢をしていたんだろう、って……。
仕事に行く俺に、「寂しい」と言った一言。
あの一言に込められた想いは、どんなに長く紡がれる言葉よりも想いが詰まっていたんだ。
今だけ……。
今日だけ……。
俺には雪が、束の間の楽しい時間を過ごしているように見えた。
自分には、永遠なんて言葉はない、って受け入れているような……、……。
「ハル君、リンちゃん。そろそろ帰りな?
オ……お、お姉ちゃんも、中に戻らなきゃ」
夕方になると、雪は子供達を気遣ってそう切り出していた。
「え~っ」と、つまらなさそうな表情で渋る二人にどこか嬉しそうな表情を見せながら……。
何度も振り返って、手を振りながら帰って行く子供達の姿を、雪は見えなくなるまで見送っていた。
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