スノウ2

☆リサーナ☆

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第20章(4)紫夕side

20-4-1

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まさかの光景に、思わず瞬きもせずに見つめる。

ゆっくりと、歩みを進めて玄関へ行くと、開いた扉から見えるコテージの外に居たのは、ゆきと二人の子供。
その、赤毛の男の子と茶髪の女の子は、俺にゆきが連れ去られた事を教えてくれた子供達で……。マリィの話で分かった、和希かずきの弟と妹の子。春来はるき鈴夏りんか

「良かった。これなら消毒すれば大丈夫そうだね?
今、救急箱を取ってくるから、少し待ってて」

鈴夏りんかの転んで擦りむいた膝の状態を診ていたゆきは、ホッとしたように微笑むと、そう言って立ち上がろうとした。
けど、そんなゆきを子供達が引き止める。

「ーー……ようせい、さん?」

「っ、え?」

「おねえさん……ようせいさん、なの?」

そう尋ねられて、ゆきは戸惑った表情を浮かべていた。そんなゆきを、子供達は目を輝かせて見つめている。

「っ、……ご、ごめんね?妖精じゃ、ないんだ」

「ちがうの?」

「う、うん」

「じゃあ、おなまえはー?」

「え?」

「おねえさん、おなまえなんていうのー?」

「っ、……」

お姉さんーー。

寝巻き姿だし、髪が長く綺麗な顔立ちをしたゆきを女性だと思うのも無理はない。
子供の純粋な瞳に見つめられて、本当の事は言えなかったんだろう。
ゆきは、微笑みながら答えていた。

「……サクラ」

「!……さくら?」

「うん、サクラって、言うんだ」

俺が旅先で自分の父親である「三月みづき」と名乗っていたように、ゆきは自分の母親である「サクラ」って子供達に名乗っていた。

間違いない。
これは、俺が仕事に出掛けていた間の……。俺の知らない、ゆきの時間の事だ。
それを斬月ざんげつが、俺に見せているんだ。
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