409 / 589
第20章(3)紫夕side
20-3-4
しおりを挟む過去に決着を着けて、今をーー。
今と言う時間を。
これからの未来を。
今生きている、大切な人達と歩きたいんだ。
その為には傷付く事もある、と、覚悟を決めて……。
俺は斬月に手を伸ばすと、その柄を握り締めて念じた。
その瞬間。「ずっと待ってた」って、斬月に囁かれて……。俺は眩い光に包まれた。
……
…………。
まるで夢を見ているかのように、映像が流れ込んでくる。
そんな俺が最初に見たのは、「ただいま~!」って、いつもの調子で帰宅する少し若い頃の親父の様子だった。
けれど、鍵を開けて中に入った家の中は真っ暗。
不思議に思いながらも、親父は「紫季?紫季、いねぇのか~?」ってお袋の名前を呼びながら捜して、捜して……。部屋の電気を点けた瞬間に、目に飛び込んで来た光景に言葉を失っていた。
なんで?
どうして?
赦せねぇーー……!!
傷付き、怯えるお袋を見て。親父は、怒りと、哀しみと……。何より、護ってやる、と誓ったのに何もしてやれなかった自分を、心の底から責めていた。
そんな親父を見て、俺の胸は、ズキンッと痛んだ。
……
…………
次の光景は、暫く時が経ったのか家が変わっていた。
そこには見覚えがある。守護神本部から少し離れた場所にあった、俺が幼い頃に親父とお袋と暮した家だった。
おそらく、お袋の為に引っ越したのであろう。
「っ、産む……?!
な、何言ってだよッ……紫季っ?!」
そんな親父の困惑した声を聞くのは、初めてだった。
やはり当然ながら……。
親父はお袋が俺を産む事に反対だったんだ。
そう、分かっていて、覚悟していた筈だったのに、やはりその様子を目の前にすると、逸らしたくて……。逃げたくて、心と身体が自然と震えていた。
けど、そんな俺を、「大丈夫」って。斬月が支えてくれる。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

親友の弟を騙して抱いて、
ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照
BL
「お前さんは随分と、いやらしい男だな?」/世話焼きだけど不器用な年上×クールで不愛想な年下
*表紙*
題字&イラスト:もち丼 様
( Twitter → @mochi_don_ )
※ 表紙の持ち出しはご遠慮ください
(拡大版は1ページ目に挿入させていただいております!)
人気モデル火乃宮平兵衛(ひのみや へいべえ)はある日突然、同居人の月島冬樹(つきしま ふゆき)を交通事故で亡くしてしまう。
冬樹の死を受け止められない平兵衛は、彼の葬式で弟の冬人(ふゆと)を冬樹と間違えて抱き締めてしまう。
今後二度と会うことはないと思っていた冬人と、平兵衛は数日後、再会を果たす。その場所は、冬樹が撮影するはず予定の現場だった。
突然芸能界へやって来た冬人に驚く平兵衛だったが、またしても冬人は驚きの言葉を口にする。
「──私を、火乃宮さんと一緒に住まわせてほしい」
そう言う冬人には、ある【目的】があったのだ。
その【目的】は、平兵衛にとって受け止められないものだった。
──だからこそ、平兵衛は冬人を【騙す】しかなかったのだ。
大切な友人を亡くした男と、兄の死に思うところがある弟のお話です!
シリアスな展開が多いですが、端々にニコッとできるような要素もちりばめました!
楽しんでいただけましたら幸いです!
※ アダルト表現のあるページにはタイトルの後ろに * と表記しておりますので、読む時はお気を付けください!!
※ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※ 2022.07.24 レイアウトを変更いたしました!!

代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる