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第20章(2)マリィside
20-2-4
しおりを挟む和希は、きっと気付いてた。
アタシが嫌いで拒んでいるのではなくて、一歩踏み出す勇気と自信がなくて、前に進めないでいる事に……。
だから、優しく。
真っ直ぐにアタシを見つめて、想いを伝えてくれていた。
「ゆっくりでいいんだ。
オレ、一晩中お前と居て、もっと……マリィの事知りたい」
和希の言う、その言葉の意味がエッチな意味ではなく、付き合っていながらも幼馴染みの延長のようなアタシ達が、恋人らしくなれるよう今までとは違う時間を持ちたい、って意味だと……分かってた。
ーー……けど。
アタシは、逃げてしまう。
「っ、そんなにヤリたいなら、他の女とすればいいじゃない……!!」
己の弱さと自信のなさを隠す為に、1番大切な人にそう言い放った。
和希に触れられたら、自分を保てる自信がなくて……。そんな乱れた自分を、彼に曝け出す勇気がアタシにはなかった。
手を振り解いた勢いで、そのままバッと背を向けて、アタシは和樹から目を逸らした。
シン……ッと、した部屋の中。
気不味い雰囲気にしたのは自分のせいなのに、胸が脈打つようにズキズキと痛かった。
彼の方が、きっと何倍も痛かった筈なのにーー……。
「……じゃあ。
なんで今日、家に呼んだの?」
ポツリッと、消えそうな声。
背後から聞こえた呟きは、声だけで今、和希がどんな表情をしているのか分かる程だった。
「……あ、そっか。人に、見られたくなかったから……だね?
それだけ、……なん、だよね?
ごめん、……オレ、また、勘違いしたんだ」
「ーー……、っ!」
あんな表情、させるつもりじゃなかったーー……。
チラッと向けた瞳に映るのは、いつもは明るい和希の、初めて見る泣き出しそうな表情だった。
生涯で見た、たった一度の……。これがアタシの見た、和希の最期の表情だった。
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