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第20章(1)紫夕side
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しおりを挟む和希とマリィが付き合い始めたのは、ちょうどこの頃からだった。
この頃の俺は、マリィの良さを大して分かっていなかったんだ。
だから、思わず和希に聞いた。
「なぁ?」
「ん~?」
「お前、なんで大海原と付き合ってんだ?」
和希はモテる。
顔がめちゃくちゃいい訳じゃないが童顔で、笑顔が可愛い。隊員として、魔器を扱う者としての力や実力は中の中ぐらいだったが、無邪気で屈託のない性格。何より困っている人を放っておけない奴で、筋金入りの優しさを持っていた。
そんな和希は今年のバレンタインデーでも大量にチョコを貰っていたし、よく、告白されている現場も目撃した。
一方のマリィは、当時はあんま人と話さなくて、真面目過ぎて……。いつも黙々と勉強ばっかりしてるクールな印象、おまけにオカマ。
誰も、よっぽどの用事がない限りマリィには近付こうとしなかった。
二人は幼馴染みで、同じ田舎町の出身だと聞いていたが……。まさか、それだけの理由で付き合うとかあり得ない。
「オレ、実は女の子より男が好きなんだ」って、返事が返ってきたらどうしよう、と思いつつ返答を待っていると、和希が素の表情を向けて俺に言った。
「え?何でって……可愛いじゃん」
「……。は……?」
可愛いじゃんーー。
その言葉に信じられなくて、俺も思わず素の表情になる。
守護神の隊員である以上、視力もそこそこ良くなくてはならない。つまり、和希は目が悪い訳ではない。
互いに素の表情で見つめ合ったまま、和希が言葉を続ける。
「可愛いし、優しいし……。真面目でしっかり者で料理上手。これ以上の人なんて、いないと思うけど?」
「……。
……お前、個性的な好みしてんだな」
そうか。
和希は目が悪いんじゃなくて、好みが少し人とズレてんだ。
そう思った俺は、「ハハッ」って苦笑いしてこの話題を終わろうと思った。
けど、そんな俺を見て、和希は真面目な表情と声で言った。
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