スノウ2

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
394 / 589
第20章(1)紫夕side

20-1-3

しおりを挟む

リンゴにはちょっとした思い出があった。
俺はビニール袋からリンゴを一つ取り出して軽く水で洗うと、そのまま丸齧りしながら"ある人物"の事を思い出した。

その人物とはーー……。

……
…………。

それは、俺が19歳の頃の出来事。

ゆう!ほいっ!プレゼント~!!」

「!?っ、ぐぇ……ッ!!」

守護神ガーディアンの本部の中庭。訓練終わりに芝生で昼寝をしていたら、腹の上にドスンッ!!と重い物が乗せられ、俺は思わず吐きそうになった。
何事だ?!と、「ゴホゲホッ」と咳き込みながら上半身を起こすと、腹の上に乗せられていたのは袋いっぱいに入ったリンゴ。
そして、誰かが自分の側にいる気配に目を向けると、そこに居たのは眩しい無邪気な笑顔を浮かべた赤毛の青年。
俺の同期で同い歳。一緒に守護神ガーディアンで隊員として働く、平野ひらの 和希かずき

「っ、……お、おま、ッ……お前なぁ~!!」

「うちの実家からさ~大量に送ってきたんだよね。だから、紫夕しゆうにもおすそ分け!……ホラ!美味しいよっ?」

「っ、……たくっ」

怒ろうと思ったのに、隣に腰を降ろして来て、歯を見せて微笑みながらリンゴを差し出されたら……もう、怒れない。
なんつーか、どんなにムカついていたりしても毒気を抜かれる。
和希かずきは、そう言う奴だった。

「……てか。
俺もこんなに食えねぇぞ?一人暮らしだし」

風磨ふうまにもあげようと思ったんだけどさ~、「遠慮しとく」って返されちゃったんだぁ~。
紫夕しゆう、彼女にあげればいいじゃん。今は……受け付けのお姉さんだっけ?」

ビニール袋に入ったゆうに10個以上はあるであろうリンゴを見つめながら会話していると、和希かずきはそのリンゴを一つ取って、服で軽く磨くとガリッと丸齧りする。

「このままでも美味いんだけどさ、ずっと食べてるとさすがに飽きてくるんだよね~。
……あ、そうだ!マリィにアップルパイにしてもらお~!あいつのお菓子、絶品だからなぁ~」

そう言って、和希かずきは嬉しそうに身体を揺らしていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

できそこないの幸せ

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:210

富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:860pt お気に入り:221

悪役令嬢は可愛いものがお好き

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:1,893

「続きがある台本たち」

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:212pt お気に入り:2

【完結】うちの子は可愛い弱虫

BL / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:203

ミューズ ~彼女は彼らの眩しい人~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

処理中です...