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第19章(5)響夜side
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しおりを挟む「……そこは、「殺して下さい」じゃなくて、「助けて下さい」、だろ?」
「!……え?」
僕の言葉に、サクヤが顔を向けた。
僕はしっかりとサクヤと目を合わせる。
「お前は無欲過ぎなんだよ。なに今のままで満足して、それ以上を求めないんだ」
「っ、……」
「同じ命を懸けるなら、最初ッから死ぬ人生じゃなくて……。生きられるかも知れない可能性に、懸けてみたくねぇ?」
「え……?」
「っ、響夜君っ?」
僕の問い掛けに、サクヤより反応したのは朝日だった。
けど。僕はサクヤに近付くと、その不安そうな表情の額を、ツンッと軽く人差し指で押して言った。
「言っただろ?自信持て、って」
「……」
「大丈夫だ、お前は死なない。勿論、子供もな」
「っ、……響、夜?」
僕の言葉に半信半疑な表情を浮かべるサクヤ。
僕が絶対に、この表情を世界一の笑顔に変えてやるーー。
「僕がなんとかしてやる。
……だから、お前は何も心配せず自分と子供の事だけ考えてろ」
そう言えた瞬間。
僕もやっと、自分の幸せを見付けた気がしていた。
……
…………
そして。
その後、子供を流す処置は一旦保留。朝日にサクヤの事を任せると、僕は親父の元へ向かおうと部屋を出た。
しかし、廊下を歩き出そうとしたタイミングで背後の扉がガチャッと開き、僕を追い駆けてきた朝日に呼び止められる。
「響夜君!
あんな約束をして……君、一体どうするつもりなんだいっ?」
酷く焦った声。
でも、振り向いてその顔を見ると、やはりその表情はとてもサクヤと腹の子供を殺せるようには見えなかった。
その表情にフッと微笑って、僕は伝える。サクヤが素直に曝け出したように、自分の今の気持ちを……。
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