389 / 589
第19章(5)響夜side
19-5-1
しおりを挟む「……オレを、殺して下さい」
サクヤがそう言った瞬間。
僕には、分かった気がしたんだ。
「オレの事を、少しでも可哀想と思ってくれるなら……。赤ちゃんと一緒に、オレの事も殺して下さい」
そう言って、微笑んだサクヤは目を奪われる程に綺麗で……。僕は、サクラが昔、よく似た表情で微笑っていた事を思い出した。
それは、サクラが我が子を抱いていた時ーー。
その時の光景を思い出して、分かった。
サクラも、サクヤも、きっと幸せなんだ、って……。
どちらが。なんて比べるものじゃなければ、二人はどんなに苦しくて辛くても、自分が不幸だなんてきっと思ってなかったんだ、って……。
サクヤが妊娠している事を自覚していると知った時は、色んな感情が溢れた。
驚き、動揺……。そして、身籠った状態のサクヤと別れた紫夕さんへの怒りの気持ち。
子供が出来るような抱き方をしておいて、自分が満足したら捨てるような男だったのか、って……。すぐに飛び出して、殴り飛ばしてやろうかと思った程だった。
けど。
自分の全てを受け入れて、今の自分を素直に曝け出して朝日に気持ちを伝えているサクヤを見たら……。紫夕さんへの気持ちなんて、どうでも良くなった。
ただ、更に強く思った。
サクヤを、護ってやりたい、ってーー。
何がその人の幸せか。なんて本人にしか分からない事なら、僕が決める事でも、推測する事でもない。
僕がやるべき事はただ一つだ。
サクヤの幸せを、支えてやる事ーー。
そう答えを見付けたら、その事以外は良い意味でどうでも良くなっていった。
サクヤの言葉に、朝日はなかなか返事を返せずにいた。
でも、奴の表情を見れば分かる。
サクヤの気持ちに触れて、朝日の考えも傾き始めている、と……。
だから、僕は言った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる