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第19章(4)雪side
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しおりを挟む朝日さんは、ゆっくり分かりやすく話してくれた。オレの今の身体の状態の事、赤ちゃんの事……。
その話を聞いたら、何故、響夜が話すのを止めていたのかも……分かった。
「本来ならば、生殖機能がしっかり整ってから排卵するものなんだけど……。君の場合は、何らかの刺激で発情が起こって、まだ身体が整っていない状態で妊娠してしまったんだ」
「……何らかの、刺激?」
「そう。それによって、身体が勘違いして……。間違いを起こしてしまったんだ」
「……」
そこまで聞いて、"処置"と言う言葉の意味も知る。
「……。辛い、と思う。
けど、このまま君の中で赤ちゃんが大きくなれば……。君も子供も、助からない」
そして、今のままのオレでは……。赤ちゃんを胎内で充分に育ててあげる事も、産んであげる事も……出来ない事を。
……、……そっか。
オレはまた、何も出来ないんだ。
そう、思った。
喜びはいつも束の間で……。
掴んだと思ったら、すぐに消えて行くーー……。
けど。
それなら、と……。オレは、言った。
「残念だけど、今回は諦めて……」
「ーー勘違いとか。間違い、とか。言わないで下さい」
朝日さんの言葉を遮ってそう言うと、オレは自分の素直な気持ちを伝える事にした。
「え?」と、目を見開く朝日さんに、ゆっくりと自分の想いを語る。
「オレ、ずっと欲しかったんです。紫夕との、子供。
だから、この子はきっと来てくれた。自分が妊娠してるかも、って思った時。オレ、めちゃくちゃ嬉しかったんです」
何故、オレは初対面で親しくもない人にこんな事を話したんだろうーー?
不思議だった。でも、感じたんだ。
"この人なら、話を聞いてくれる"、って……。
「だから、この子が出来たのは間違いなんかじゃない。
オレが望んで、その想いに、この子が応えてくれたんです」
そう言ったら……。
朝日さんは、顔を歪ませて、今にも泣き出しそうな表情に変わっていた。
だから、オレは続けて言った。
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