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第19章(4)雪side
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しおりを挟む「大丈夫そうだね。
……ただ、暫く飲食していなくて脱水症状と栄養不足の心配があるから、点滴をさせてね?」
点滴。
そう言って、朝日さんがオレの左腕に触れる。
朝日さんに悪い印象は、感じなかった。
むしろ、紫夕に匂いが似ているせいもあってか、落ち着く気がした。
でも。
だからかも、知れない。
朝日さんを疑ってるとか、そういうんじゃなくて……。思わず、オレは聞いた。
「……あ、の」
「ん?」
「その点滴、って……。
お腹に赤ちゃんが居ても、大丈夫……ですか?」
その直後。
カシャンッ、って音が部屋に響いた。
用意していた点滴を、朝日さんが落とした音だった。
昔、マリィの元で手伝いをしていた時。妊婦さんには使っちゃ駄目な薬があるから、って毎回しっかり確認してたのを思い出して、聞いただけだった。
けど、オレの言葉に、朝日さんは明らかに動揺しているように映った。
「っ、お前……。
知ってたのか?自分が、妊娠してる事……っ」
震える手で落とした点滴を拾う朝日さんの代わりに、オレに問い掛けてきたのは響夜。
オレは、静かに頷いて……。もう一度、朝日さんに問い掛ける。
「……大丈夫、ですか?オレの、赤ちゃん」
「!っ、……え?」
その問い掛けに、朝日さんは戸惑いながらも目を合わせてくれた。
それは、ずっと聞きたかった事だった。
妊娠してるかも、って思った時からずっと、お医者さんに聞きたかった。
「オレ、全然……大事にしてあげられてなくて……っ。
ご飯も、あんまり食べれてなくて……。だから、ずっと心配で……ッ」
一度口にしたら、堪らない気持ちが溢れる。
本当に、自分の中でちゃんと命が育っているのか不安だった。
ただでさえ肉がつかなくてガリガリで、それなのに悪阻かご飯がまともに食べられてなくて……。おまけに、紫夕を怒らせた時も、風磨さんに襲われそうになった時も、危険な目に遭わせて身体に負担をかけた。
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