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第19章(3)響夜side
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しおりを挟む「……参ったねぇ。実に困る。
"こんなモノ"完全に失敗作じゃないか」
その言葉と共にバサッと机の上に投げられる、サクヤの検査結果の資料。
その資料にクリップで留められていた胎児のエコー写真をグシャッと握り潰しながら、親父が言葉を続ける。
「細胞分裂がここまで進んでいては、魔物の細胞を注入したところで上手く混ざり合う可能性もない。
……全く。まだ成熟し切ってない不完全な身体に負担をかけて、これで二度と身籠れない身体になったらとんだ損害だ。
発情を促す為に望月紫夕の傍に置いたのに、回収時期を間違えたな……」
それは、とても実の父親だとは思えない言動だった。
分かっては、いた。
でも、本当にサクヤやその子供を自分の実験の道具としか思っていないその発言には、僕の胸もチクリッと痛んだ。
「胎児が成長すれば、負荷が大きくなる。
早々に薬を使って流せ。その方が身体が傷付く事があるまい」
身体が傷付く事がーー……。
身体の事だけで、サクヤの心が傷付く事は全く考慮されない、処断。そして、更に……。
「ただの人間との間に出来たガキなど、私には興味がない。
朝日、始末しろ。
お前が処置してやった方が浮かばれるよ。なんせ、お前の孫だもんなぁ?お祖父ちゃん」
親父はニヤリッと笑いながら、朝日に向かってそう言葉を投げかけた。
お腹の子供が紫夕さんの子供であり、朝日の孫だと言う事を、知っている上で……、…………。
……
…………。
親父がどんな人間か、なんて分かってた。
そう知った上で、分かった上で、側に居た。
けど。
今回は、それを改めて目の当たりにして……。自分の怒りが消え失せる程に、酷い、と思った。
サクヤの妊娠を知って、自分だって納得がいかなかった筈だったのに……、今は…………。
「……傍に、居てやるからな」
そう呟いて、僕はベッドの端に座るとサクヤの寝顔を見つめながらそっと手を握った。
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