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第19章(3)響夜side
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しおりを挟む幸せ、って、何だーー……?
親父が森の中に建てた病院兼、研究施設に戻ってきた僕は、その一室のベッドで眠るサクヤの寝顔を見つめた。
風磨に捕まって、ホテルで襲われそうになっていた所を助けて……。その際から体調が悪そうだったサクヤは、その夜から三日間眠ったまま。
でも、それはサクヤの血筋である魔物の特性で、スノーフォールは怪我をしたり体力が低下すると、長時間睡眠する事で体力の回復に努める事からだろう。
それは、問題ない。
問題は、別にあった。
……
…………それは、ここに戻って来てサクヤが一通りの検査をして分かった事だった。
数時間前ーー。
「……は?妊、娠?」
親父とその親父の研究チームの有力者が集まった研究室で、サクヤの担当医師である朝日が検査で分かった結果を告げた。
その、まさかの事態に驚いた僕は、思わず声を上げてしまう。
「っ、どう言う事だよ?」
スノーフォールが、例え生まれた際の性別が男でも、絶滅を回避する為に子を産む事が出来る種族、と言う事は知っていた。
だから、その血を受け継ぐサクヤが同等だと言う事も……。
でも、僕は納得がいかなかった。何故なら……。
「サクヤが子供を身籠れるようになるのは、二十歳になってからじゃなかったのかよッ!」
そう。
それが以前、僕が聞いたスノーフォールが男でも妊娠が可能になる年齢だった。
子供を身籠もり産める、と言っても、男として産み落とされた以上、初めからその機能が身体に備わっている訳じゃない。
周りに同種族がいない。子孫を残す事が難しい、と本能的に悟ると、徐々に徐々に生殖機能が変化して……。別の種族と交わる事で命を繋げていこうとするんだ。
でも、それが可能なのは成熟期を迎えてから……。サクヤの場合は、二十歳を過ぎてからだ、と言われていた。
それなのに、まだその時期ではないサクヤが妊娠ーー……。
話が違う。
そう思った僕が朝日に詰め寄ると、俯く奴の代わりに口を開いたのは親父だった。
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