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第19章(2)朝日side
19-2-4
しおりを挟む真っ白になるような、何も考えられなくなるような頭の中で、私は気付かされた。
自分がこんなにも、彼女を愛していたのだと言う事にーー……。
恋人になれなくてもいい。結ばれなくてもいい、なんて嘘だった。
私はずっと、彼女とこうしたかった。
例え、命令されたからでも。
例え、彼女が私に対してなんの想いがなくとも。
こんな狂った愛でも、彼女と身体を繋げられて幸せと悦びを感じている自分が居たんだ。
彼女の胎内に欲望を放って、自分でいっぱいにして、心の中で囁いた。
紫季さん。
貴女の事を、愛していますーー。
守護神に来た初日。右も左も分からなかった自分に、初めて声を掛けてもらったあの日から……ずっと、…………。
ーー……
………………。
そして、その後。
私は橘さんの命令で暫く守護神を離れて、他国で勉強する事になった。
あれ以来、女性に興味を持つ事も、性欲が湧く事もなくなった私は、ただひたすらに勉強に打ち込み……。念願の、医者になる事が出来た。
私が再び守護神に戻って来た時、紫季さんはすでに仕事を辞めて、結婚して遠くへ行ったと風の噂で聞いた。
今更どうする事も出来ない私は、もう彼女に会う事が出来ない寂しさと同時に、内心ホッとしていた。
けれど、ある時だった。
「朝日 昇、ってのはアンタだよな?」
そう、声を掛けてきたのは、紫季さんの兄である三月さん。
心臓の鼓動が一気に跳ね上がって、「はい」と答える声が心の動揺と共に震えた。
背筋にじんわりと、冷たい汗が滲む。
あの事がバレたのか?
三月さんは、自分が犯人だと言う事を知っているのか?
もしかして、復讐に来たのかーー……?
この後に及んで、そんな感情が浮かんだ私は本当に最低だった。
本当に本当に、私は己の事しか考えていなかったのだ、と思い知る。
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