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第19章(1)響夜side
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しおりを挟む心を絞られたかの様に痛く、そして熱くなって、どうしようもない怒りの感情が湧き上がる。
この直後に部屋の扉がコンコンッ!とノックされ、ハッとさせられなかったら、怒りで我を忘れる程だっただろう。
「響夜君、遅くなってすまない。サク君の様子はどんな感じだい?」
扉が開き、中に入って来たのは僕が呼んだ医者の朝日。
父の部下の一人だが、朝日はその中では珍しく人の血が通っている、と思える人間の一人だった。
「今は眠ってる。
けど、吐いて、熱も少しある。……あと、……」
「ーー……って、響夜君!?君も怪我してるじゃないか!血、血が……っ」
歩み寄って来る朝日にサクヤの状態を説明していると、僕の手の怪我に気付いた奴は慌てて診てくれようとした。
でも僕はバッとその手を振り解くと、朝日に背を向けて扉に向かって歩き出す。
「擦り傷だ。
僕は平気だから、サクヤを頼む」
「えっ?何処に行くんだい?」
「自分の部屋。着替えたらすぐ戻る。……サクヤを任せたぞ」
そう簡単に言葉を交わすと、僕は一旦サクヤの居る部屋から出た。
廊下で「ふぅっ」と深呼吸して、気持ちを整えて、傷付いた手の血と傷を舐めながら自らの宿泊部屋に向かう。
「「今度泣かせたら返してもらう」。
……そう忠告した筈だったからな、紫夕さん」
サクヤは、僕が護る。
それが、例えどんな方法だったとしてもなーー……。
僕は、心の中でそう覚悟を決めた。
耳に着けていた小型通信機を起動させ、ある人物に連絡を取る。
その通信相手とは親父、橘 涼夜。
「……親父。気が変わった、"例の計画"に乗ってやるよ。
その代わり……僕からの頼みも聞いてくれ」
サクラとの約束。
サクヤの幸せと夢。
そして、自分自身もたった一つの欲しいものを手に入れるためにーー……。
……
…………。
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