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第19章(1)響夜side
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しおりを挟むその写真とは、おそらく紫夕さんの幼い頃の家族写真。
なんでこんな物をサクヤが持っているのかーー?
僕には、すぐに分かった。
幼い紫夕さんを気に入った、と言うのも理由の一つではあるだろう。
けど、もっと違う理由がある。
これは、サクヤの……。
いや、僕達の"憧れ"の形だった。
父親と母親に囲まれて過ごす、人としての普通の日常。家族、と言うものに、強い憧れを持っての事だろう。
自分も、家族になりたいーー。
……と。
僕はその写真をサクヤが眠るベッドの側にある低い棚の上に置き、リュックもそこに置いてやった。
が、すぐにおかしな点に気付く。
自分が「サクヤを捕獲した」と知らせを受けたのは今朝の事。
捕獲したーー。
それなのに何故、サクヤは荷物など持っているのかーー……?
無理矢理に、突然に風磨に捕まったのなら、荷物など所持している筈も用意が出来る筈がないからだ。
僕はいけない、と思いながらもリュックの中身を覗いた。
中に入っていたのは、少しの着替えと、お菓子の缶。缶の中にはボロボロの手袋や、ボールペン……など、僕から見たらただのガラクタ同然の品。
しかし、その中で僕の目を引いたのは一冊の通帳だった。それを目にして、まさか、と思う。
サクヤ、自分から紫夕さんの元を出て来たのかーー?
僕は、もう一度しっかりとサクヤの寝顔を見た。
泣き腫らした瞼は、明らかに今朝やついさっき泣いた程度でなる状態じゃない。
目の下の酷いクマも、今朝から今にかけて出来るもんじゃない。
……と、言う事は?
明らかに紫夕さんと何かあり、眠れない程に傷付き、サクヤは泣いたのだ。
勿論、そうなるまでには何か理由があったのかも知れない。でも、
紫夕さんがサクヤを泣かせたーー。
そう思ったら、僕は自然と拳を握り締める手に力が入って……。自らの爪で傷付いた手の平からは、血が溢れ出していた。
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