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第19章(1)響夜side
19-1-1
しおりを挟む「……。……寝たか」
ベッドで眠るその寝顔を見つめて、僕は想う。
雪……。サクヤの事は、生後三ヶ月位から一歳位まで毎日のように見てきた。
ミルクをやったり、オムツを替えたり、遊んだり……。
あの頃のサクヤは、もういないと思ってた。
何か動作を起こす度に転がりそうな幼くて頼りない身体も、か弱い小さな手も、「にーに!」って呼ぶ、辿々しいあの声も……。
でも、この寝顔を見たら、サクヤはやっぱりサクヤだ、って思った。
大きくなっただけで、あの頃と何も変わってなんかいない。
僕の、大切なサクヤだーー……。
そう思ったら、思わず、頭を撫でていた手がサクヤの頬に伸びて、親指でそっと唇に触れていた。
きっと、変わったのは僕の方だ。
あの頃の愛おしい気持ちが、純粋なものからやましい気持ちが入り混じったものに変わっている事に気付く。
もっと、触れたい。
そう心が疼いて、明らかに兄としてではない感情に突き動かされそうになった。
けど、泣き腫らした瞼、目の下のクマ、血色の良くない唇を見て……。僕は、サクヤから手を離した。
昔、「護ってやる」と言った時に、とても嬉しそうに微笑ってくれたサクラの笑顔が、僕を何とか兄として抑えてくれる。
僕はサクヤの吐瀉物で汚れた衣服を脱ぐと、部屋に置いてあったバスローブに着替えて、汚れた床を掃除した。
このホテルの別部屋に行けばまともな着替えがあるが、今この場を……。サクヤの傍を離れる訳にはいかない。
……いや。
僕はきっと、離れたくなかったんだ。
サクヤと約束したから、と自分に言い聞かせて、言い訳にして、傍に居た。
……ん?
これ、サクヤの荷物か?
掃除の途中に目に入った、床に転がったリュックサック。
掃除が終わってから拾いに行くと、床に転がった衝撃か口が開いていて、中から1枚の写真がヒラリッと落ちた。
紫夕さんとのラブラブな写真だと思って一瞬拾うのも見るのも躊躇するが、その写真を目にした僕は何だか胸が締め付けられた。
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