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第18章(4)雪side
18-4-3
しおりを挟むシンッとした部屋の中に、風磨さんの「フフッ」って笑い声と一歩踏み出す足音が鳴って、オレは思わずビクッと身体を揺らした。……が。
「ーーまあ、いいや。
今日は僕が引き下がるとしよう」
ーー……え?
聞こえたのは、予想外の言葉。
「響夜君とは本気でやり合いたくないし……。出来れば、嫌われたくないからね。"お義兄さん"」
お義兄さん。
その言葉を強調させて響夜に言うと、風磨さんの足音は遠ざかって行き……。バタンッ、と、扉が閉まる音がした。
……
……、……助か、った?
ゆっくり伏せていた視線を上げて、部屋を見渡す。そこには確かに姿も見えなければ、風磨さんの気配はこの部屋から完全に消えている。
本当に、出て行ったようだ。
勿論、首輪はまだ着けられたままだし、いつ再び襲われるか分からない手の中。けど、ひとまず危機は去った。
しかし、そうホッとしたのも束の間。
「ーー……ぅ、っ!」
気持ち、わる……っ。
一難去ってまた一難。
胃液が込み上がってくる感覚。吐きそう。
オレは咄嗟に口を押さえて、トイレに向かおうとベッドから降りようとした。でも……。
「ーーっ?……危ねぇッ!!」
ガクンッと自分の身体が落ちる感覚と、その声はほぼ同時だった。そしてその直後に感じる、自分を抱き締めてくれる温もり。
焦るあまり布団に足を取られて、ベッドから落ちそうになったオレを、響夜が抱き止めてくれたのだ。
ありがとうーー。
そう言いたかったけど、オレはまた言えなかった。
「っ、たく!何やってんだ、おめぇーー……」
「ーーっ、ゲボッ」
堪え切れなくて、オレは響夜に抱き止められたまま嘔吐してしまう。
床にビチャビチャと吐瀉物が滴り落ち、その後も咳き込みながら何度も嘔吐した。
その結果、飛び散った吐瀉物は床や自分の手や衣服だけではなく……。響夜の事も、汚してしまった。
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