スノウ2

☆リサーナ☆

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第18章(2)紫夕side

18-2-2

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けど、出来なかった。
唇が違う。触れ合っても、何も感じない。
抱き締めても、俺の身体も心も全く反応しなかった。
ゆきの身体はもっと華奢で、力入れ過ぎたら折れそうなくらい細くて、肌も幼い頃の古傷で凸凹してる。
女性の方が程良く肉付いてて、柔らかくて、肌もすべすべだ。……それなのに、…………。

ーーゆき以外、欲しくねぇ……ッ。

あの身体に触れる度、目にする度。どうしようもなく愛おしくて、包み込むように護ってやりたいって思うんだ。
肌を重ねる時。いつまで経っても遠慮がちに背中に手を回してくる姿に、堪らなく胸を締め付けられる。
俺はお前のもんなんだから、どんなに爪痕付けて傷付けてもいいのに……。アイツはいつも、俺を傷付けないように必死だった。

……
…………ゆきの方が、きっと今、何十倍も傷付いてる。

俺を噛んで、傷付けて、心を痛めているに違いなかった。
だから、今朝帰った時。謝ろうと思ったんだ。

けど、玄関に駆け寄って来たゆきの気配を感じたら……。実際にゆきを間近にしたら、上手く言葉が出て来なかった。
とりあえず風呂場に行ってシャワーを浴びても、全然上手く気持ちの切り替えが出来なくて、おかしな態度しちまった。

そんな時にゆきにトドメの一言を言われて、まるで突き放すみたいな言葉をーー……。

「……。
絶対、勘違いしてるよな?」

ゆきの事を気持ち悪い、なんて思った事は一度だってない。
むしろ、穢れた血を持つ自分を知ってからは尚更、アイツが神秘的な程に美しく見えて仕方なかった。

「お~し!到着だぁ~!!」

車がキッ!!と停まった気配にハッとすると、運転してくれていた職人さんが窓を開けてそう叫ぶ声が聞こえた。

……帰ったら、ちゃんと向き合おう。
そんで、明日は久々にデートするんだ。

最後の仕事を熟して。
何度も頭ん中で謝るシュミレーションをして。
大好物の苺を買って帰ってもすでに遅い事を、この時の俺はまだ知らなかった。

……
…………。
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