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第18章(1)雪side
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しおりを挟む「……気持ち悪いのは、オレなんだ。
だから、君は何も心配しなくていいからね?」
普通の女の人の元に宿ったら、この子はきっと紫夕に愛されていただろう。
でも、オレが男で、魔物で、普通じゃないから……。きっと、受け入れてもらえない。
「全部全部、オレが悪いんだ。
全部、オレのせいにしていいから……。一つだけ、オレの我が儘に付き合ってくれる?」
オレは、部屋の片隅に置いてある自分の荷物を漁った。
そこから必要な物を取り出して、自分用のリュックに詰めて、ここから出て行く……。旅に出る、準備を始める。
……オレ一人でも、絶対に諦めたりしない。
今はどうであれ、おそらくこの子を授かったあの夜。紫夕はオレを愛してくれてた。幸せな、愛おしい時間だった。
それに、例え紫夕の気持ちが変わってしまっても、オレの気持ちは1ミリも変わらない。
ウザい、って言われそうな程、大好きで大好きでしょうがないんだ。だから、……。
ーー……大丈夫、頑張れる。
だってオレは、世界で1番大好きな人の子供を産めるんだ。
唯一無二の、宝物をもらった。
紫夕との幸せだった時間の全てが自分の身に宿っている事が、オレを前に進ませてくれる。
「……これ、貰っていくね」
そう呟いて手に取ったのは、オレの通帳。
ずっと紫夕に預けてて、守護神で働いていた時の給料が全部入ってる。
中を開いて見ると、一度も引き落とされていなくて、溜まっている一方だった。「使ってね!」って言ったのに、家賃も、生活費も、旅の費用も……。紫夕は全部、自分の貯金から賄っていてくれたのだ。
本当は今までのお礼に置いて行きたい。
でも、これからや子供の事を考えると、お金は必要だと思った。
オレが紫夕に残していける物は何もないけど……。
そのかわり、もう自由に……。好きに、無理しないで過ごしてほしいな。
オレと暮らし始めて、紫夕はきっと我慢ばかりしていた。
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