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第18章(1)雪side
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しおりを挟む童話のヒロインも、魔法が解けてしまった時こんな気持ちだったのかなーー?
童話だったらこの後に、王子様が迎えに来てくれる、って言う素敵な終わりになるのかも知れない。
……
…………けど。
オレには、そんな希望を抱ける余裕はなかった。
元々紫夕に愛してもらえた事が奇跡だったのに、紫夕も子供もと欲張って……。どんどん今以上を望んだ、オレがいけなかったんだ。
夢だと分かりながら夢を見る程恋をして。
叶わないと知りながらも願う程、オレは紫夕を愛してたーー……。
「っ、気持ち悪りぃ……ッ」
ついに、そう、言われちゃった。
オレの事を「自分にとって1番の綺麗だ」って言ってくれていた紫夕にでさえ、今はもう、そう映るんだ。
「……そう、だよね。
気持ち悪い……よ、ね……?」
男なのに、魔物なのに……。
欲を出したオレは、きっと紫夕が愛して「綺麗だ」と言ってくれたあの頃より、欲深くて汚くなってしまったんだ。
これは、オレに与えられた罰だーー……。
紫夕が再び出て行ってしまって、暫くして……。涙は、もう出尽くした。
すると、ずっと物陰に隠れていた紫雪が歩み寄って来て、オレを見上げて「みゃ~」と鳴いた。
その、どこか悲しそうな鳴き声を聞いたオレは、涙を手で拭った後。微笑んで、紫雪の頭をそっと撫でた。
「……紫雪。
紫夕の事……よろしくね?」
オレがそう言うと、紫雪は何かを察したように跳びついてくる。
けどオレは、何回か撫でた後。床に紫雪を残して立ち上がった。
……もう、ここに居る訳にはいかない。
「赤ちゃんの事……言えなくて、良かった」
そっとお腹に触れて、心からそう思った。
今でもこんなに心が痛いのに、赤ちゃんの存在を知られて、「産むな」って紫夕に否定されたら……。拒絶の表情をされたら、もう、本当に立ち直れなかった。
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