347 / 589
第17章(3)紫夕side
17-3-4
しおりを挟む「やだ……っ、やめてッ!今だけは嫌だッ!!」
今だけは嫌だーー。
その雪の言葉に隠された想いに気付く筈もなく、俺はただ、"雪が俺を拒絶している"としか思えなくて……。涙目になりながら、必死に抵抗するその姿に逆上するだけだった。
片手で両手を掴んで、振り解けない程に力を込めて抵抗を阻止すると、雪のズボンと下着を太ももまで下げて、強引に身体の向きを変えさせた。
もう何も見ないように。何も見れないように、後ろから攻めてやろうと思った。
……けど。
俺が自分のズボンのベルトに手を掛けた瞬間。
「ーー……ッ、いっ!?」
雪を押さえ付けていた左腕に痛みが走った。
そして、その直後に聞こえてきたのは「グルルルルッ」と言う、魔物の唸り声。
雪が、俺の左腕に噛み付いて威嚇の唸り声を上げていた。
ギロリッ、と背後にいる俺を横目で睨むその瞳には紅い輪郭が表れていて……。それは、雪が魔物状態になっている時の証。
きっと、それは正当防衛だった。
身重の身体を襲おうとした俺から何とか護ろうとしたスノーフォールの本能が、咄嗟に飛び出して俺を攻撃したんだ。
でも、その状況を目の当たりにした俺には絶望感以外の何者でもなかった。
魔物化した雪は、体当たりして自分から突き飛ばすと、ベッドから落ちて尻餅を着く俺に向かって牙を剥き、再び近付こうものなら容赦はしない、と言った威圧感で唸り声を上げている。
「……。……そ、っか。
……、……そんなに、嫌かよ」
その姿に、今までの全てを拒絶されたように感じた。
どんな風に変わろうとも、雪が何者であろうとも、愛して、大切にしてきたつもりだった。
けど、本当に、"つもり"だったのかも知れないーー……。
「……分かった。
……。もう、いい……」
俺はそう呟いてゆっくり立ち上がると、脱ぎ捨てて床に落ちていたシャツと上着を手に取った。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
処女姫Ωと帝の初夜
切羽未依
BL
αの皇子を産むため、男なのに姫として後宮に入れられたΩのぼく。
七年も経っても、未だに帝に番われず、未通(おとめ=処女)のままだった。
幼なじみでもある帝と仲は良かったが、Ωとして求められないことに、ぼくは不安と悲しみを抱えていた・・・
『紫式部~実は、歴史上の人物がΩだった件』の紫式部の就職先・藤原彰子も実はΩで、男の子だった!?というオメガバースな歴史ファンタジー。
歴史や古文が苦手でも、だいじょうぶ。ふりがな満載・カッコ書きの説明大量。
フツーの日本語で書いています。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる