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第17章(2)雪side
17-2-4
しおりを挟むそう思い始めたら、全てが疑わしくなる。
長い眠りから覚めたあの時、自分でも驚く程に紫夕に抱かれたかったのは発情期。
町中で頭が痛くなったり、お腹が痛かったりしたのは緊張や不安からではなく、実は身体が変化し始めていたから……。
異様に肉に執着して食欲が増したのも、身体が妊娠のせいで栄養を欲していたから……。
そして、ここ最近の吐き気や体調不良は……。
悪阻、だったーー……?
「……っ、……はは。
ま、さか……そんな訳…………」
馬鹿げた考え。
妄想や憶測が激し過ぎる。
でも、そう思いながらも……。ついつい、両手でそっと優しく、自分の下腹部に触れてしまう。
……もし、…………。
もし本当に赤ちゃんが居るなら、オレはどうするのーー……?
そう、自分で自分に問い掛けた。
するとその時。玄関の扉が再びノックされ、ハッとしたオレは扉をじっと見つめた。
「サクラさん、何度もごめんね?
お節介だとは思ったんだけど……。ドアノブに掛けておくから、これだけ受け取ってもらえないかい?」
声の主は亜希さん。
扉の外に、亜希さんがいる。
あんな酷い追い返し方をしたのにまだ気に掛けてくれるのだ、と思いながらも……。もう、扉を開ける訳にはいかない。
オレが何も答えずに居ると、再び亜希さんは話し出した。
「うちの息子の嫁もね、「子供が出来ない」って言われた時があったんだよ。
でも、無事に授かって、春来は生まれてきてくれた。
だから……。サクラさんが何で「子供が出来ない」って言ったのかは分からないけど、思い込みで諦めちゃいけないよ?」
その言葉の後に、カタンッて、ドアノブに何かを引っ掛ける音がした。
そして、「じゃあ、身体大切にしなさいね」って言って……。足音は、次第に遠ざかって行った。
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