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第17章(1)雪side
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しおりを挟む「紫雪!
紫雪、聞いて?明後日ね、オレ紫夕とデートなんだよっ?」
紫夕が仕事に出掛けてしまったけど、デートの約束を交わしたオレは嬉しさで元気いっぱいだった。
話し掛けるオレに首を傾げる紫雪を抱き上げて、ぎゅっと胸に抱きながら幸せに浸る。
オレがいつ魔物化の症状が表れてしまうか分からないから大した所にはきっと行けないけど、そんなのは構わない。場所なんて何処でもいいんだ。
紫夕と一緒にお出掛けーー。
それだけで、本当に嬉しかった。
「……あ!
でも、また体調が悪くなっちゃったら……中止、だよね」
紫雪を抱いてはしゃいでいたオレはハッとして、それだけは絶対に嫌だ!って思って、今日は大人しく安静にしていようと思った。
紫雪を降ろして、寝なくてもベッドで横になっていよう、と足を踏み出すと、そのタイミングで玄関の扉がコンコンッ!とノックされた。そして……。
「サクラちゃ~ん、いる~?ぼくだよ~!」
「わたしもいるよ~!」
その声で、オレは一瞬で誰が訪ねてきたのか分かる。
ハル君とリンちゃん。二人の声がした。
っ、……どうしよう。
その声にオレは躊躇して、扉の方をじっと見つめた。
二人が来てくれた事は嬉しい。
けど、紫夕との約束もあるし。自分はもう、紫夕の事を1番に考える、って決めたのだ。
ここでまた二人に会ってしまったら、また、約束を破る事になるーー……。
そう思ったオレは心の中で二人に謝って、居留守を使う事にした。
しかし、
「こらこら、二人とも!「ぼく」と「わたし」、じゃ誰なのか分からないだろ?」
と、二人に言い聞かせる年配の女性の声がした。
どうやら、ハル君とリンちゃん以外に誰かいるようだ。
その様子に、ますます出てはいけない、と思ったが、二人を叱咤した女性は声を整えるとオレに語り掛けてくる。
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