スノウ2

☆リサーナ☆

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第17章(1)雪side

17-1-3

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けど、紫夕しゆうが抱えてる全てには当然気付けなくて……。オレは単純に、紫夕しゆうが今の生活に疲れてるんだ、って思った。
だから、オレは隣に居る紫夕しゆうに抱きついて言った。

「……じゃあ、もう、仕事行かないで?」

「!……っ、ゆき?」

「っ、……オレ、寂しいっ。
紫夕しゆうともっと、一緒に居たいんだ」

自分の気持ちを素直に伝える事ーー。

それが、今の自分に出来る精一杯だと思った。
何でも言え、って言ってくれた紫夕しゆうに、自分の気持ちを隠さない事が1番だと思った。
そしたら、

「……そっか。
……そう、だよな」

そう呟くように言った後、紫夕しゆうが抱き締め返してくれた。

「分かった。
今入れてる仕事から先は、もう入れない事にする」

「!……紫夕しゆう

「今日と明日だけ、我慢してくれるか?
そしたら明後日、お前の体調が良かったらこの辺りを一緒に散歩しよう」

「っ、……本当?」

紫夕しゆうを元気付ける為に言ったのに、その返答に笑顔になってしまったのはオレの方だった。
見上げたら、「ああ」って笑顔で頷いてくれる紫夕しゆうに、左手の小指を立てて指切りをせがみながらオレは声を弾ませた。

「うん、っ……うん!我慢するっ!
明後日、約束!デート、っ……デートだよねっ?」

また、紫夕しゆうとデート出来るーー!!

もう、絶対に無理だ、って諦めていた約束に胸が躍る。
子供みたいに食い付くオレに「ぷっ」って笑ったけど、紫夕しゆうは自分の小指を絡めて指切りしてくれた。

「ああ。……約束だ」

この時、オレは信じて疑わなかった。
この約束よりも、紫夕しゆうよりも大切なものが自分に出来てしまうなんて……。
大切な人を裏切ってでも、今まで大切にしてきた全てを捨ててでも……。
諦めたくない。護りたい、ってものが、出来るなんてーー……。

……
…………。
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