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第17章(1)雪side
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しおりを挟むけど、紫夕が抱えてる全てには当然気付けなくて……。オレは単純に、紫夕が今の生活に疲れてるんだ、って思った。
だから、オレは隣に居る紫夕に抱きついて言った。
「……じゃあ、もう、仕事行かないで?」
「!……っ、雪?」
「っ、……オレ、寂しいっ。
紫夕ともっと、一緒に居たいんだ」
自分の気持ちを素直に伝える事ーー。
それが、今の自分に出来る精一杯だと思った。
何でも言え、って言ってくれた紫夕に、自分の気持ちを隠さない事が1番だと思った。
そしたら、
「……そっか。
……そう、だよな」
そう呟くように言った後、紫夕が抱き締め返してくれた。
「分かった。
今入れてる仕事から先は、もう入れない事にする」
「!……紫夕」
「今日と明日だけ、我慢してくれるか?
そしたら明後日、お前の体調が良かったらこの辺りを一緒に散歩しよう」
「っ、……本当?」
紫夕を元気付ける為に言ったのに、その返答に笑顔になってしまったのはオレの方だった。
見上げたら、「ああ」って笑顔で頷いてくれる紫夕に、左手の小指を立てて指切りをせがみながらオレは声を弾ませた。
「うん、っ……うん!我慢するっ!
明後日、約束!デート、っ……デートだよねっ?」
また、紫夕とデート出来るーー!!
もう、絶対に無理だ、って諦めていた約束に胸が躍る。
子供みたいに食い付くオレに「ぷっ」って笑ったけど、紫夕は自分の小指を絡めて指切りしてくれた。
「ああ。……約束だ」
この時、オレは信じて疑わなかった。
この約束よりも、紫夕よりも大切なものが自分に出来てしまうなんて……。
大切な人を裏切ってでも、今まで大切にしてきた全てを捨ててでも……。
諦めたくない。護りたい、ってものが、出来るなんてーー……。
……
…………。
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