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第17章(1)雪side
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しおりを挟む「ーー……あれ?
紫夕、もう洗濯してくれたの?」
朝。
目が覚めて顔を洗いに洗面所へ行くと、脱衣所の籠に入れて置いた筈の洗濯物が綺麗さっぱりなくなっていた。
疑問に思って台所で朝食の支度をしている紫夕の元へ行き問い掛けると、背を向けたままの彼から返事が返ってくる。
「ああ。ちょい、目が早く覚めちまってな。もう一度寝るには時間が微妙だったから、洗濯したんだ」
「そう、なんだ……。
ごめんね。オレぐっすり眠ってて、気付かなくて……」
魔物の力に目覚め始めてから減っていた筈の睡眠時間がここ最近はガラッと変わってしまい、一度眠るとなかなか起きれなくなってしまっていた。
体調が悪いせいだと思うけど、そのせいで今はすっかり紫夕より起きるのが遅くなってしまい、家事もほとんど任せきり。
申し訳なくて謝ると、歩み寄ってきた紫夕が俯いていたオレの頭をポンッて撫でながら言った。
「謝るな、って言っただろ?お前が今優先するのは、身体を休めて体調を整える事だ。
だから、全部俺に任せて、甘えてくれていい」
「っ、……紫夕」
そう言う紫夕がオレにはすごくカッコ良く映って、胸がキュンとした。
思わず見惚れて見上げていると、頭に置かれていた紫夕の手がオレの頬に降りてきて、親指でそっと唇を撫でられる。
あ、……キス、される?
嬉しくて、胸を弾ませて、オレは目を閉じた。
……けど。唇と唇が触れ合う事はなく、紫夕の手はまたオレの頭に戻って、くしゃくしゃって撫でられた。
あれ?って思って目を開けると、オレと目が合う前に背を向けた紫夕が言う。
「ホラ、早く顔洗ってこい。お前の好きな苺も洗ってあるから」
「……あ、っ……う、うんっ」
オ、オレの勘違いっ……?
は、恥ずかしい……っ~~。
絶対にキスだ、って思ったのに紫夕にそんなつもりはなかったのだ、と分かるとすごく恥ずかしかった。
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