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第16章(4)紫夕side
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しおりを挟む少し前に会った杉本から、俺の守護神での指名手配は解けた、と聞いたが……。今度は俺を守護神の隊員として連れ戻す為に捜される可能性はあったし、何より、雪を捜す事を奴らが諦めるとは到底思えなかった。
だから今回も、旅先でずっと使っていた偽名。親父の名前を使った。
けど、それを署名した事での町長の反応に、俺はドキッとした。
まさか、偽名だって……バレたか?
もし怪しまれているなら、早々にここを立ち去らなくてはならない。
車の荷台じゃなくて、雪をゆっくり出来る場所で暖かい布団で休ませてやりたかったが……。やむ得ない。
そう覚悟した俺だったが、町長さんは「はははっ」と笑うとあっけらかんとして言った。
「すごいな~同姓同名だ!
いやね、実は昔他で貸家を出してた時、お兄さんと全く一緒の名前の人に家を貸した事があったんだよ。
面白い名前だからインパクトあって、覚えててさ~」
「あ、……あ~!そう言う事ッスか!」
町長さんの言葉にホッとして、気の緩んだ俺は一緒に「あはは」と笑った。
その町長さんの言った同姓同名の人物が一瞬誰の事かも浮かばない程に、きっと俺は今の雪との生活を守るのにいっぱいいっぱいだった。
だからこの後。調子を良くした町長さんが何気なく話してくれた過去話が、自分にとってどれ程のダメージになるか、なんて……。予想出来る筈もなかった。
「それがね~結構訳ありな人でさ。
守護神の隊員さんみたいだったんだけど、妹さんが強姦魔に襲われて、おまけに妊娠しちゃって……。
それで、本部の施設近くには住めないから少し人から離れた場所で暮らしたいってねーー……」
ーー……。
町長さんの言葉を聞いた瞬間。
否定の想いよりも先に、俺にはある日の記憶がよみがえった。
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