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第15章(2)紫夕side
15-2-3
しおりを挟む色々話を聞いてもらっておいて、こっちの都合で悪い、と思いつつも、今日は帰らせてもらおうと俺は杉本に声を掛けようと近付いた。
……だが。
俺が、彼の名前を呼ぼうとした瞬間。
「そうなんだよ!紫夕さんマジでヤバいって!!
人間と魔物が共存出来る世界を創る、とか言っててさ!完全に魔物に洗脳されて、頭おかしくなっちゃってるんだって!!」
ーー……っ、は?
その杉本の、小声ながらもパニックを抑え切れないような口調に、耳を疑った。
杉本は誰かと……。おそらく高木か前園と通信機で通話していた。
「どうしよう?どうしたらいいっ?
絶対に本部に連れて帰って、医者に診せた方がいいよなぁ?!」
……、……杉本、何言ってんだ?
杉本の言動が、俺には理解出来なかった。
ついさっきまで目の前で楽しそうに微笑って俺の話を聞いてくれていた杉本が、顔を真っ青にして、汗をかいて、まるでおかしな人物に出会ったかのように慌てている。
マジでヤバい。
魔物に洗脳。
頭がおかしい。
医者に診せた方がいいーー……。
放たれた言葉を、もう一度混乱する頭の中で何とか繰り返すと……。何かにスッと熱を奪われて、妙に冷静になれた気がした。
ーー……そうだ。
俺が今やろうとしてる事は、簡単に理解してもらえるもんじゃなかったんだ。
目が、覚める。
現実はそんなものだと分かっていながら、期待してしまった自分に……。心のどこかで、誰かに頼りたい、助けてほしい、って思ってる自分に腹が立って……。俺は拳を強く握り締めた。
「とにかく、すぐに来てくれ!
僕1人じゃ紫夕さん連れて帰れないよっ……」
「ーー……っ」
通話先の相手にそう必死に訴える杉本の言葉を最後に、俺は見付からないように、静かに……。テーブルに代金を置くと、カフェを後にした。
……
…………。
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