スノウ2

☆リサーナ☆

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第15章(1)紫夕side

15-1-4

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マ、マズい……。

そんなこんなで逃げるキッカケを失っていると、

「……っ、あれ?
もしかして、紫夕しゆう……さん?」

警備員の1人が、俺の名前を呼んだ。
その声にビクッとして視線を移すと、なんとそこに居たのは守護神ガーディアンの隊員、杉本すぎもと。俺の後輩で、一時期少しばかり目を掛けて面倒をみていた奴の1人だった。

っ、やべぇ……ッ。

その姿に、呼吸が止まり、冷や汗が流れ出る。
俺は今、守護神ガーディアン内で指名手配中だ。関係者に見付かり、捕まったらどうなるか?なんて、目に見えて分かる。

捕まって、自由を奪われて、色々調べられた挙げ句、ゆきの存在感を知られたらーー……?

魔物を敵とする守護神ガーディアンに捕まってしまったら、ゆきの未来は確実になくなってしまう。

こうなったら、後先なんて考えてはいられない。
何とか振り切ってすぐにこの場を逃げて、ゆきと一緒にこの付近から離れなくてはーー……。

そう思った。
ドキンッドキンッと高鳴る鼓動を必死に抑えながら、足をゆっくり一歩後ろに引いた。
けど、その瞬間。

「戻って来て下さいよ!」

「!っ、……え?」

予想外の言葉に、行動と思考が一瞬止まる。
俯いていた顔を上げると、杉本すぎもとが俺の腕を掴んで訴えるように言った。

「僕には、紫夕しゆうさんが悪者だなんて思ません!
何か考えや理由があるんでしょうっ?僕で良かったら力になります!
だから、何でも話して……頼って下さいよ!!」

俺を見つめる真っ直ぐな瞳。
そして、何よりもその言葉が、今の俺の心にはジンッと刺さった。
自分を慕ってくれて、可愛がっていた後輩。更に、ここ暫く、ずっと誰とも会話したり接したり出来なかった環境が、俺を弱くした。

杉本コイツなら、俺の話を聞いてくれて、力になってくれるんじゃねぇかーー……?

そんな考えが頭を過って、俺は杉本すぎもとを邪険にする事は出来なかったんだ。

……
…………。
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