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第15章(1)紫夕side
15-1-4
しおりを挟むマ、マズい……。
そんなこんなで逃げるキッカケを失っていると、
「……っ、あれ?
もしかして、紫夕……さん?」
警備員の1人が、俺の名前を呼んだ。
その声にビクッとして視線を移すと、なんとそこに居たのは守護神の隊員、杉本。俺の後輩で、一時期少しばかり目を掛けて面倒をみていた奴の1人だった。
っ、やべぇ……ッ。
その姿に、呼吸が止まり、冷や汗が流れ出る。
俺は今、守護神内で指名手配中だ。関係者に見付かり、捕まったらどうなるか?なんて、目に見えて分かる。
捕まって、自由を奪われて、色々調べられた挙げ句、雪の存在感を知られたらーー……?
魔物を敵とする守護神に捕まってしまったら、雪の未来は確実になくなってしまう。
こうなったら、後先なんて考えてはいられない。
何とか振り切ってすぐにこの場を逃げて、雪と一緒にこの付近から離れなくてはーー……。
そう思った。
ドキンッドキンッと高鳴る鼓動を必死に抑えながら、足をゆっくり一歩後ろに引いた。
けど、その瞬間。
「戻って来て下さいよ!」
「!っ、……え?」
予想外の言葉に、行動と思考が一瞬止まる。
俯いていた顔を上げると、杉本が俺の腕を掴んで訴えるように言った。
「僕には、紫夕さんが悪者だなんて思ません!
何か考えや理由があるんでしょうっ?僕で良かったら力になります!
だから、何でも話して……頼って下さいよ!!」
俺を見つめる真っ直ぐな瞳。
そして、何よりもその言葉が、今の俺の心にはジンッと刺さった。
自分を慕ってくれて、可愛がっていた後輩。更に、ここ暫く、ずっと誰とも会話したり接したり出来なかった環境が、俺を弱くした。
杉本なら、俺の話を聞いてくれて、力になってくれるんじゃねぇかーー……?
そんな考えが頭を過って、俺は杉本を邪険にする事は出来なかったんだ。
……
…………。
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