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第14章(2)紫夕side
14-2-3
しおりを挟む「大丈夫、取らねぇよ。
俺はお前に何にもしねぇから、心配するな」
言葉が通じるとは思わなかったが、俺はそう声を掛けて微笑むと、袋の中から買って来ていた残りの肉も全て出して床に置いてやった。
そして、肉に喰いついたまま俺から目を逸らさない雪からゆっくり後退りしながら離れる。
「ゆっくり食べていい。
俺、暫くいなくなるから……。な?」
そう声を掛けて俺は荷台から降りると、静かに扉を閉めて、暫く雪を一人にしてやる事にした。
「……。
っ、いちち……思いっきり噛まれたな」
外に出た俺が噛まれた傷を確認すると、犬歯の鋭い歯形がくっきり。でも、肉を喰い千切られるのは避けられたから、簡単な処置だけで何とかなりそうだった。
しかし、どうしたもんかな……。
あのまま、まるで心だけ魔物になっちまったような雪と、暮らせるのかーー……?
そう考えて、背中から降ろした斬月を手に取って見つめた。
雪がさっき襲いかかってきた時、今思えば斬月はなんの反応も示さなかった。
俺はそれを、
斬月は、きっとまだ雪を魔物として判断していないーー。
そう、都合の良いように解釈した。
そして、「大丈夫。きっと、空腹が満たされれば元の雪に戻る」って自分に言い聞かせた。
……
…………そして、一時間後。
「……、……すげぇ。
見事に、骨まで全部喰ったのか……」
ボリボリバキバキ言ってた荷台の中が静かになったと思って中に入ると、俺がやった肉は骨も跡形もなく全て消えていて、残されていたのは床についた血痕だけだった。
そして雪は、腹が満たされて満足したのか、荷台の片隅でまるで犬か猫が眠るかのように身を縮めて眠っている。
あ~あ、血でカピカピにしちまって……。
床についた血を拭いて、俺は次にそっと雪の頬に手を伸ばしてそっと触れた。
なりふり構わずかぶりついてた結果、雪の口元にも顔にも乾いた血がべっとり。
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