スノウ2

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
282 / 589
第14章(2)紫夕side

14-2-3

しおりを挟む

「大丈夫、取らねぇよ。
俺はお前に何にもしねぇから、心配するな」

言葉が通じるとは思わなかったが、俺はそう声を掛けて微笑むと、袋の中から買って来ていた残りの肉も全て出して床に置いてやった。
そして、肉に喰いついたまま俺から目を逸らさないゆきからゆっくり後退りしながら離れる。

「ゆっくり食べていい。
俺、暫くいなくなるから……。な?」

そう声を掛けて俺は荷台から降りると、静かに扉を閉めて、暫くゆきを一人にしてやる事にした。

「……。
っ、いちち……思いっきり噛まれたな」

外に出た俺が噛まれた傷を確認すると、犬歯の鋭い歯形がくっきり。でも、肉を喰い千切られるのは避けられたから、簡単な処置だけで何とかなりそうだった。

しかし、どうしたもんかな……。
あのまま、まるで心だけ魔物になっちまったようなゆきと、暮らせるのかーー……?

そう考えて、背中から降ろした斬月ざんげつを手に取って見つめた。
ゆきがさっき襲いかかってきた時、今思えば斬月ざんげつはなんの反応も示さなかった。
俺はそれを、

斬月ざんげつは、きっとまだゆき魔物として判断していないーー。

そう、都合の良いように解釈した。
そして、「大丈夫。きっと、空腹が満たされれば元のゆきに戻る」って自分に言い聞かせた。

……
…………そして、一時間後。

「……、……すげぇ。
見事に、骨まで全部喰ったのか……」

ボリボリバキバキ言ってた荷台の中が静かになったと思って中に入ると、俺がやった肉は骨も跡形もなく全て消えていて、残されていたのは床についた血痕だけだった。
そしてゆきは、腹が満たされて満足したのか、荷台の片隅でまるで犬か猫が眠るかのように身を縮めて眠っている。

あ~あ、血でカピカピにしちまって……。

床についた血を拭いて、俺は次にそっとゆきの頬に手を伸ばしてそっと触れた。
なりふり構わずかぶりついてた結果、ゆきの口元にも顔にも乾いた血がべっとり。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

処女姫Ωと帝の初夜

切羽未依
BL
αの皇子を産むため、男なのに姫として後宮に入れられたΩのぼく。  七年も経っても、未だに帝に番われず、未通(おとめ=処女)のままだった。  幼なじみでもある帝と仲は良かったが、Ωとして求められないことに、ぼくは不安と悲しみを抱えていた・・・  『紫式部~実は、歴史上の人物がΩだった件』の紫式部の就職先・藤原彰子も実はΩで、男の子だった!?というオメガバースな歴史ファンタジー。  歴史や古文が苦手でも、だいじょうぶ。ふりがな満載・カッコ書きの説明大量。  フツーの日本語で書いています。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

処理中です...