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第14章(1)紫夕side
14-1-2
しおりを挟むっ、このままじゃダメだッ……!
雪、頑張ってくれよっ?!
俺は雪を抱き抱えると、守護神の目を避けながら隠してある車の元まで急いだ。
……
…………。
車に戻ると、俺はすぐ様荷台にある荷物を漁る。
「!っ、……あった!」
救急キットと一緒に積んであったのは、小さな小瓶に入った薬。
以前、サクヤを診てくれていた朝日が「もし、サクヤ君に何かあった際に使って下さい」と言って渡してきた、謎の薬だった。
朝日は橘と繋がっている。良い奴そうに見えても、100%信用出来る訳じゃなかった。……けど。
「っ、雪……」
青白い顔でグッタリと横たわる瀕死の雪を、このまま放ってはおけない。
普通の医者に診せる事は出来ない。
ならば、今俺が、雪が助かる為に頼れるのは……。この薬しかなかった。
「……。
もしもの時は、一緒に……死のう?」
この薬を使って、もし雪の身におかしな事が起きたら、その時はーー……、……。
俺は、覚悟を決めた。
自分の口に小瓶の中の液体を口に含むと、仰向けに寝かせている雪に口付けて、ゆっくりと、飲ませた。
ゴクッと、雪が薬を飲んだのを確認すると、次は冷たくなった身体を暖めてやらなくては、と俺はすぐに濡れた服を脱がしてタオルで拭いてやり、傷を綺麗な布でキツく縛った後に毛布で包んだ。
しかし、それだけでは足りない。
雪の顔に触れると熱いのに、カタカタと小刻みに震えていた。
森の中での過酷なサバイバル生活のせいで、元々体調を崩していたのかも知れない。
それなのにこんな酷い怪我を負って、悪化させてしまったらそれこそ死だ。
「……雪、大丈夫だ。絶対に俺が助けてやるからな?」
俺は、自らも服を脱ぎ捨て裸になると、雪の身体を抱き締めて毛布に包まった。
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