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第13章(2)雪side
13-2-3
しおりを挟む……チガウ。
コレジャ、ナイ。
でも、口にした瞬間にそう感じた。
一つ食べ終わって、また一つ。また一つ、と口にしていくのに、心の奥底の欲が満たされる事はなかった。
それでも、手と口を止めない。どんどん、気を紛らわすかのように頬張った。
それ、なのに……、……。
「ッ、……お願いだから、これで我慢してよっ」
いつまで経っても、満たされないーー。
自分の身体が何を欲しがっているのか。何を食べれば満たされるのか、分かる。
けど、"それ"を口にしてしまったら、もう、本当に自分は人として最後な気がした。
落とした果実を食べ尽くして……。何とか堪えようとして、今日はもう眠ってしまおうと考えたオレは、寝床を探しに歩き出そうとした。
でも、その時。背後の茂みがガサッと揺れて、オレは咄嗟に視線を向ける。
ーー……っ。
ドクンッ、と。
大きな鼓動が身体に一気に血を巡らせるように響いた。
視線の先に居たのは、野ウサギだ。
茶色の野ウサギが、首を少し横に傾げてこちらを見てる。
何とも可愛らしい姿だろう。
……と。
以前のオレなら、そう思っただろう。
けど、今のオレの目には……。
ーー……アア。
ナンテ、オイシソウナ、ニク。
……、……
…………………
その感情を最後に、オレの意識はプツリと途切れた。
…………
…………、…………
ーーーー………………翌朝。
いつの間に見付けたのか、目を覚ますとオレは小さな洞窟の中で身を丸めるようにして眠っていた。
口の辺りや頬が、何だかカピカピする。
手や腕を見ると、まるでペンキをそのまま触ったかのように真っ赤に染まっていた。
そして、昨夜の空腹が嘘のように落ち着いてる。
「……」
オレはゆっくり起き上がると、音と匂いを頼りに河原へ向かった。
たどり着くと、真っ赤な手を洗おうと川に近付く。
ギリギリまで近付いて川の水に手を浸けると、水面に映るのは自分の顔。
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