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第13章(2)雪side
13-2-2
しおりを挟む襲いかかってしまいそうな自分を、自らの手を噛む事で必死に今回は抑える事が出来た。けど……。
ーー……きっと、もう限界だ。
きっとオレは、このまま魔物としての本能に支配されていって……、……。
「……っ。
……、……ちゃんとお別れ、したかったなぁ」
自分なりに、いつが紫夕との最後になってもいいように毎日を過ごしてきたつもりだった。……が、やはり寂しい。
いや、でもきっと、いつ、どんな形で別れても心の底から納得出来るなんて事はないのだろう。
それに、今更どんなに悔もうが戻る訳にはいかない。
母さんが魔物化してしまう寸前のように、オレにはまだこの身体に鱗が表れたり、爪が鋭くなったりの変化は見られないが、最近身体がムズムズしたり、違和感を感じる事が時々あるんだ。
母さんと同じ変化で自分が魔物化する、と言う根拠や確定がない以上……。どんな些細な事も気を付けなくてはならない。
「でも、約束してほしい。
最後の日まで、最後の瞬間まで、諦めない。
何かあったら、どんな些細な事でも話して、相談してくれ。
……俺と、生涯のパートナーとして、生きてくれ」
ーー……約束、守れなかった。
紫夕、本当にごめんね。
心の中でそう呟いて、涙がジワッと溢れ出しそうだった。
けど、それと同時にお腹が「ぐ~っ」って鳴って、オレは思わず自分のお腹を摩りながら苦笑いする。
こんな時なのに、お腹空くんだ……。
自分の本能と欲に、呆れた。
悲しいのに、切ないのに、寂しいのに……。自然とオレは匂いで食べ物の在処を見付けていた。
ポケットに入っていたハンカチで傷付いた手を簡単に手当てすると、ゆっくりと立ち上がって歩き出す。
すると、そこから少し先にあったのは木になった果実だった。以前、探索した際に食べられる、って学んだ。
オレは氷の矢を造りだして高い木になっている果実を落とすと、ひとまずそれを食べて空腹を満たす事にした。
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