スノウ2

☆リサーナ☆

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第13章(1)紫夕side

13-1-4

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***

息苦しかった密室の車内から解放されて、なんとか町に到着した。
町の賑やかな雰囲気と、人の居る環境にどうしてもホッとしてしまう。

でも、そうそうゆっくりもしていられない。
長く人と接触してしまう事は、たちばなが俺達を見付けてしまうキッカケになりかねないからな。
そう思った俺は、今日の目的である肉を入手する為にゆきを連れて精肉店へと向かった。

店の近くまで来ると、ここでは仕入れた肉を焼いて食える店と連なっているらしく、美味しそうな良い匂いが漂ってきた。
さすがに、この匂いを感じて気持ちが持ち上がらない訳がない。
店のガラス戸から店内を見ると、ショーケースに色んな種類の肉が並んでいるのが見える。どれもホントに美味そうだ。

ゆき!見てみろよ、美味そうだぜ!
なぁ?どんな肉にしようか?やっぱ、骨付きのでっかい肉ーー……」

俺は良い気分を取り戻して、ゆきに問い掛けた。
けど、その言葉は途中で……。ゆきを見て、ピタリと止まって、喉から出てこなくなった。

背筋が、凍るーー……。

信じられない。
目を疑う……。いや、嘘だ、と言いたくなる、光景。

俯いていると思ったら、ゆきが震えていて……。「フーッ、フーッ」と、まるで魔物が空腹時に食べるのを我慢して興奮しているような荒い息遣いをしていた。

……、っ……嘘、だろ?

声が、出ない。
ポタッ、ポタッ、と異様に大きく聞こえる、まるで大粒の雨が地面に落ちるような音。
それは、ゆきの大量の唾液と、血。自らの手を、自らで噛み締めて……。ゆきは足元の地面を唾液と血で濡らしていた。

「っ、キャアァァァーー……ッ!!!」

俺がゾクッとしたのと同時に、ゆきの異様さに気付いた通りすがりの女性が悲鳴を上げた。
その声に俺がハッとして、我に返った時にはすでに遅い。女性が悲鳴を上げた事で周りの人々がゆきの存在に気付いて騒めき始める。
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