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第12章(2)雪side
12-2-2
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***
そして、翌朝。
「よし!まずは朝ご飯作りだ!」
良い妻、母、になるべくオレの新たな1日が始まった。
まだ紫夕が寝ている間に荷台をそっと抜け出して、オレは車が停めてある場所のすぐ近くの川にやって来ると、水面を……。いや、その中を泳ぐ魚をじっと見つめた。
これからは、魚も捕まえられるようにならなきゃ!
旅をする合間に町に寄ったりして買い出しはするものの、もし次の町が遠かったりした際は食材が不足したり、時期によっては日持ちする食材が手に入りにくい事もあるかも知れない。
その際に、絶対に狩りは必須だ。
そう思ったオレは、川で泳いでいる魚を捕まえられないか考えた。
……動きは、目で追える。
問題は、オレが俊敏に捕まえられるかどうかなんだよね。
とりあえず、やってみる事にした。
オレは靴と靴下を脱ぎ、服の袖とズボンの裾をまくるとゆっくり川へと足を踏み入れてみる。
気配や足音をなるべく消して獲物に近付く事は可能だ。
けど、すぐ側まできてサッと水の中の魚を掴もうとするが、水面がバシャ!!と音を立てて揺れただけで……。虚しく手が濡れ、指の間からポタポタと水滴が落ちるだけだった。
やっぱり駄目か……。
オレ、ホント運動神経鈍いなぁ……。
魔器を持たない自分は本当に無力で嫌気がさす。
っ、駄目駄目!!
すぐに諦めちゃ駄目だ。他に方法を考えないと!
自分の母親だってずっと研究所に閉じ込められていて大した知識も力はなかった筈だったのに、幼い自分を連れて逃亡して、旅をしていた時期があったのだ。
思い出せば大変な日々だったけど、自分は今生きている。それは、知識や力がないながらも、母が必死に頑張って自分を護ってくれたからに違いなかった。
……きっと、オレにだって出来る!!
そう言い聞かせて、水に濡れた手を見つめてグッと握り締めた。
その時。その瞬間に、何だか手に違和感を感じた。
そして、翌朝。
「よし!まずは朝ご飯作りだ!」
良い妻、母、になるべくオレの新たな1日が始まった。
まだ紫夕が寝ている間に荷台をそっと抜け出して、オレは車が停めてある場所のすぐ近くの川にやって来ると、水面を……。いや、その中を泳ぐ魚をじっと見つめた。
これからは、魚も捕まえられるようにならなきゃ!
旅をする合間に町に寄ったりして買い出しはするものの、もし次の町が遠かったりした際は食材が不足したり、時期によっては日持ちする食材が手に入りにくい事もあるかも知れない。
その際に、絶対に狩りは必須だ。
そう思ったオレは、川で泳いでいる魚を捕まえられないか考えた。
……動きは、目で追える。
問題は、オレが俊敏に捕まえられるかどうかなんだよね。
とりあえず、やってみる事にした。
オレは靴と靴下を脱ぎ、服の袖とズボンの裾をまくるとゆっくり川へと足を踏み入れてみる。
気配や足音をなるべく消して獲物に近付く事は可能だ。
けど、すぐ側まできてサッと水の中の魚を掴もうとするが、水面がバシャ!!と音を立てて揺れただけで……。虚しく手が濡れ、指の間からポタポタと水滴が落ちるだけだった。
やっぱり駄目か……。
オレ、ホント運動神経鈍いなぁ……。
魔器を持たない自分は本当に無力で嫌気がさす。
っ、駄目駄目!!
すぐに諦めちゃ駄目だ。他に方法を考えないと!
自分の母親だってずっと研究所に閉じ込められていて大した知識も力はなかった筈だったのに、幼い自分を連れて逃亡して、旅をしていた時期があったのだ。
思い出せば大変な日々だったけど、自分は今生きている。それは、知識や力がないながらも、母が必死に頑張って自分を護ってくれたからに違いなかった。
……きっと、オレにだって出来る!!
そう言い聞かせて、水に濡れた手を見つめてグッと握り締めた。
その時。その瞬間に、何だか手に違和感を感じた。
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