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第11章(3)雪side
11-3-3
しおりを挟むそして、朝ご飯が済んで後片付けをしていると、紫夕が自分の考えた今後の事について話してくれた。
「え?あの家を捨てて……旅に?」
「ああ。一緒に、色んな場所に行こうぜ。大変な事もあるかも知れねぇが、絶対に楽しい!
……、……嫌、か?」
その提案を聞いて、きっとそれはオレの事を考えて、オレの為に紫夕が決めてくれたんだ、って思った。
オレが人目を気にせずに生きられるようにーー。
……すごく、申し訳ないな、って思った。
けど、オレには紫夕と離れる、なんてもう考えられない。許される限り、傍に居たい。一緒に居たい。
そんなオレの答えは、一つしかなかった。
「ううん、嫌じゃない」
紫夕にギュッと抱きついて、オレは微笑った。
「一緒に旅したい。
紫夕と紫雪と一緒に、色んな所に行きたい」
ずっと夢見てた。
紫夕と紫雪と、家族で楽しい想い出をたくさんつくる夢。
本当に叶うんだ、って思ったら、オレにはもう、幸せな気持ちしかなかった。
「よっしゃ!決まりだな!
じゃあ、一度家に戻って紫雪を迎えに行こうぜ!」
「うんっ」
強く手を取り合って、紫夕と一緒に未来を歩むーー。
オレの残りの人生は、もう幸せしかないと思ってた。
一緒に時を重ねて、想い出を増やして……。静かに、その人生の終わりを迎えられると思ってた。
……
…………けど。
そんな考えは、甘かった。
何で忘れてたんだろう。
そんな事は、絶対に無理だって……。
オレが魔物で。
オレが橘さんの息子で。
オレが、橘さんの実験動物である以上……。
ただ、静かに暮らす、なんて事は絶対に無理だった。
……
…………。
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