スノウ2

☆リサーナ☆

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第11章(2)紫夕side

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ゆきがニコッと微笑って、俺の左手をそっと両手で握り締めて、言葉を続ける。
俺の瞳にスローモーションのように映る、その瞬間。きっと何となく、ゆきが何を言いたいのか感じ取っていた。

それは、俺にとって、世界一悲しい約束……。
いや、世界一悲しい、俺達のプロポーズ。

「オレ、頑張って生きる。魔物化しちゃうその日まで、紫夕しゆうと生きる。
……でも、…………。
もし、魔物化が始まって、魔物になっちゃって、どうしようもなくなっちゃった、その時はーー……」

ゆきが、最後の言葉を発する為に呼吸する。
その口元の動きを見ていた俺は、ゆきが次の言葉を紡ぐ前に、言った。

「ーー……俺が、お前を殺してやる」

俺は、ゆきが最後の言葉を口にする前に、そう言っていた。
その言葉だけは、俺が言ってやらなきゃいけない、って、思ったんだ。

俺達二人の間に流れる、ただ、見つめ合うだけの刹那の時ーー。

俺に言葉を遮られて、素の表情になったゆきを見つめながら、握られていた手を今度は自分が包み込むように握った。

「でも、約束してほしい」

そして、自分の左手の上にゆきの左手を重ねるように乗せると、右手でポケットを探った。そこにあるのは、ずっと渡しそびれていた三日月が刻まれた指輪。

「最後の日まで、最後の瞬間まで、諦めない。
何かあったら、どんな些細な事でも話して、相談してくれ。
……俺と、生涯のパートナーとして、生きてくれ」

俺はその指輪を、そっとゆきの左手の薬指にはめた。

世間に認めてもらえない夫婦だけど。
人と魔物、って変わった夫婦だけど。
いや、そもそも夫婦、って呼べるのか分からないけど……。
こんなにも想い合える相手に出逢えた俺は、誰が何と言おうと世界一幸せだって思えた。

ゆきを想う気持ちは、そんじょそこらの夫婦には絶対に負けない、って、思ったーー。

じっと、見つめていると、ゆきの目からみるみるうちに涙が溢れてきて、はめてやった三日月の指輪にポタポタと落ちる。
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