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第11章(2)紫夕side
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しおりを挟む「……オレが紫夕を好きになったのはね、初めて会った日だよ」
「!……へ?」
その言葉に、俺は自分の耳を疑うくらい信じられなかった。
初めて会った日。それは、つまり……。
「俺が、お前を保護した時……か?」
思わずそう尋ねながらも、もしそうならば自分と同じタイミングで雪が好意を持ってくれたなんて、めちゃくちゃ嬉しかった。
しかし、あの時の記憶を思い返すと……。俺は雪に、それ程好かれる事はしていない気がする。
と、言うか、あの時何の事情も知らなかった俺は、魔物から逃げようとしなかった雪を引っ叩いて怒鳴り付けたんだ。
その後も……。保護したものの、あの日雪に優しくしてくれたのは他の誰でもないマリィであって、俺は特に何もしてない。
どこか好かれるポイントがあったか?と必死に記憶を巡らせていると、首を横に振った雪が言った。
「それよりも、前」
「え?」
「オレが紫夕に初めて会ったのは、母さんが魔物化したあの日だよ」
ーー……ッ。
それは、同じタイミングで惹かれ合ってたんじゃないか?って、浮かれていた気持ちが一瞬で吹き飛ぶくらいの衝撃だった。
その雪の言葉に、俺は思わずビクッと身体を揺らしてしまう。
何故ならそれは、その日は、守護神が……。いや、俺が、雪のお袋さんであるサクラさんを斬った日。
その日の光景がよみがえる俺に、雪は続ける。
「オレ、思い出した。見てたんだ。少し離れた場所から、魔物化した母さんが……守護神に討伐されるのを」
「っ、……ゆ、き」
見て、たーー?
嘘だろ?って。
そんな残酷な現実を、幼い雪が見ていた事。そして、その時の自分を見られて、知られていた、と言う真実に、俺は動揺と戸惑いを隠せなかった。
雪がこの話を切り出したキッカケも忘れて、今までどんな気持ちで自分の母親を殺した男と一緒に居たんだろ、って……。
そう思ったら、胸がズクッと重く痛んだ。
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