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第11章(2)紫夕side
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しおりを挟むそれなのに、さっきは我慢出来なかった。
今まで、こんな気持ちになった事、なかった。
ただの独占欲とかじゃない。
雪が愛おし過ぎて、つい、思ったんだ。
このまま俺の子を孕んじまえばいいのに、ってーー……。
そんな事、無理だし。
雪には絶対に言えねぇ。
言ったら雪は、また俺が別の女と結婚した方が幸せだ、って悩むだろう。
自分じゃ叶えてあげられない、って……。
俺は、お前とだから、そう思うんだけどな……。
この気持ちを、どう伝えてやったらいいのか分からない。
だから、ありきたりな言葉だけど、俺は言った。
「……雪。愛してる」
俺がそう言ったら、振り向いた雪がまた顔を真っ赤にして、はにかむように微笑った。
そして、身体の向きを替えて俺の方を向くと、ギュッと抱きついて言う。
「もう一回」
「ん?」
「もう一回言って?もっと、聞きたい」
「っ、そ、それは~……照れるな」
意地悪とかじゃなく、それはマジで恥ずかしかった。
照れた俺は何とか誤魔化したくて、雪の頭を撫でたり頬に口付けたりしてやり過ごそうとした。
でも、この後に雪が話してくれる事を聞いた俺は……。伝えられる事は今伝えて、やりたい事は今行動しなきゃいけない、って思うんだ。
「……ね?紫夕は、いつからオレの事好きになってくれたの?」
「っ、あ?!」
その質問に、また俺は更に照れた。
俺が雪を好きだと自覚したのは、ケルベロス討伐が終わった日の夜。初めて雪を抱いた日だ。
けど、実際に惹かれてたのはそれよりもずっと前で……。そう、おそらく、初めて会ったあの瞬間からだった。つまり、一目惚れ。
でも、出逢ったあの瞬間に惚れた、とか。
雪がまだ子供だった時から好きだった、とか、知られるのが恥ずかしくて……。俺はまた黙り込んでしまう。
そしたら、雪が静かに自分の事を語り始めた。
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