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第10章(3)雪side
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しおりを挟むけど、立ち止まってくれた紫夕がゆっくりと振り返って、顔を合わせられた瞬間。オレの胸は、また比べ物にならない位熱くなるんだ。
っ、オレ……馬鹿だ。
こんなに好きなのに、離れられる訳ないじゃん……ッ。
そして、改めて再確認する自分の気持ち。
何故離れようとしたんだろう?
何でもっと、自分の気持ちを大切にしなかったんだろう?
紫夕に言うべきだった言葉は、もっとたくさんあったんだ。
難しく考える前に、素直に言っちゃえば良かったんだ。
もっと構って。
一緒に居たい。
一緒にお風呂入りたい。
もっともっと、触れ合いたい。
恥ずかしくて、ずっと隠してた気持ち。
それから……。
オレが魔物でも、一緒に居てほしい。
一緒に、居てくれる?
いつかオレが人じゃなくなっても、愛してくれるーー……?
……そう、怖くて聞けなかった気持ち。
紫夕の幸せだ、って理由にして、オレは自分の弱さを隠して、逃げてたんだ。
今度こそ、言わなきゃ。
相手の気持ちを探る前に、自分の気持ちをーー……!!
オレを見つめていた紫夕が、一歩踏み出して、こっちに歩み寄って来てくれる。
オレも行かなきゃ、と足を前に踏み出そうとした。
けど、その時ーー……。
「ーー遅かったッスね、紫夕さん」
!っ、……響夜。
オレの後を追って来ていたのだろうか?
響夜が、オレと紫夕の間に立ち阻んだ。
しかし。その登場に驚くオレをよそに、紫夕も一瞬驚いた表情をしたものの、すぐに響夜と会話を始める。
「約束通り、雪は返してもらうぞ」
え?……約束?
「あれ?今の場合、紫夕さんが見付けた、って言うよりは、雪が見付けたんじゃないッスか?」
え?……え?
「う、っ……。細かい事言うなよ。
とにかく、時間内に雪と会えたんだからいいだろっ?」
時間内、って……何が???
二人の会話が、オレには意味不明だった。
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