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第10章(2)紫夕side
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しおりを挟むその言葉に「え?」と驚く男の子を抱き上げて立ち上がると、俺はそのまま肩車してやる。
「お前、名前は?」
「……ハ、ハル」
「ハル、か。
よし、ハル!俺がこうやって町中を歩いてやる。だから、パパとママを見かけたらしっかりと声を出すんだ。いいな?」
「っ、……うんっ!」
俺がそう声を掛けると、男の子は……。ハルは、ようやく笑顔になって頷いた。
不思議だった。その笑顔を見たら俺の焦っていた気持ちも落ち着いて、嬉しくなって微笑ってた。
「いい返事だ。じゃあ、行くぞ!」
急がば回れーー。
根拠はないけど、この子を助けてやれたら、同時に雪の事も救ってやれる気がしたんだ。
雪も笑顔になってくれる、って、思ったんだ。
俺はハルを連れて、町中を歩き回った。
ハルに両親の特徴を聞きながら、時折店員さんに子供を捜している人がいないか尋ねて尋ねて……。
……
…………そして、二時間後。
警備員には尋ねられないと言う(むしろ避けなくてはならないと言う)難解な状況の中、俺は何とかハルを両親の元に帰してやる事が出来た。
両親を見たらホッとしたのかハルはまたわんわん泣いて、両親は怒りながらも、少し涙ぐんでハルを大事そうに抱き締めてた。
「本当にありがとうございました」
「ほら、ハルもお礼言いなさい」
「うん!
おじちゃん、ありがとう!ばいば~い!」
「お、おう!
もう迷子になるんじゃねぇぞ~」
ハルの「おじちゃん」発言に内心ショックを受けながらも、嬉しそうな笑顔と幸せそうな家族の姿にまた笑みが溢れて……。俺は笑顔で手を振って見送った。
おじちゃん……。
そっか、そうだよな。俺ももう、そんな歳なんだよな。
両親がハルを真ん中に挟んで、手を繋ぎながら仲良く歩き去って行く背中を見て、しみじみとそう思った。
ハルの両親は多分俺よりも若い。守護神で戦いに明け暮れていたとは言え、18で結婚出来るこの世界で、自分は未だに独身で子供もいない。
親父でさえすでに結婚して、俺がいたのに、な……。
そんな事を思って、思わず溢れる苦笑い。
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