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第10章(2)紫夕side
10-2-1
しおりを挟む一方その頃ーー。
俺は雪を捜して、町中を走り回っていた。
飲食店で雪と言い合いになり、少し離れて頭を冷やそうと思った俺は一度席を立ち、トイレへと向かった。
今日は楽しくデートにして、もう一度プロポーズして、最高の1日になる筈だった。
それなのに……、……。
「あの時、倒れたオレの事なんて忘れて、可愛い女の子と付き合って、結婚して……。幸せになれば良かったんだっ……」
雪にそう言われたら、ショックを隠し切れなくて思わず声を上げちまった。
雪は優しくて、自分の事よりも他の人の事を誰よりも考える奴だ。
ああ言ったのは、俺への想いが強いからこそだ、って少し考えりゃ分かったのに……。
だから、謝ろうと思った。
洗面所で顔を洗って、深呼吸して、雪ともう一度話し合おうと、俺は席に戻った。
でも、さっきまでの席に雪の姿がなかった。すぐに店員に尋ねると、俺が席を立ってから暫くして「店を駆け出して行った」と聞いた。
ーーなんで、1人にしちまったんだ!!
もう絶対に離れない。
離さない、って決めたのに、1人にしてしまった事を俺はめちゃくちゃ後悔した。
自分も店を出て、町中を捜し回った。
その時。
たまたまクセで持ち歩いていた通信機に、メールが入ったんだ。
送信相手は、なんと響夜。
『紫夕さんの捜し者は僕が保護しました。返してほしければ、陽が落ちるまでに見付けて下さい。
もし、見付けられなかった場合は、親父に土産として持って帰ります』
それが、メッセージの内容。
「っ、……ふざけんな!」
俺はすぐ様、通信機で響夜に連絡を取る……。が、どれだけ鳴らしても応答しない。
俺は「チッ」と舌打ちして、通信機を握り締めたまま再び町中を走り出した。
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