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第10章(1)雪side
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しおりを挟む「ーー行くぞ」
「っ、……何処に?」
「お前が自信持てるように、リハビリだ」
そう言って、響夜はオレの手を引いて町中を歩き出した。
一歩一歩、人混みに向かって歩いて行く。
モヤモヤは晴れたけど、やっぱり緊張や恐怖が全くなくなる訳ではない。進む度に胸がドキドキ早くなって、思わず繋いでいる手をぎゅっと握り締めてしまった。
しまった、って思ったけど、響夜は少しも嫌そうにしなかった。
それどころか優しく握り返してくれて、「大丈夫だ」って、手の温もりで伝えてくれた。
そっと顔を上げる。
……本当だ。誰も、オレの事見てない。
勇気を出して辺りを見渡すと、みんな買い物をしていたり、一緒に居る人と会話をしていて……。オレの事を見ていない事に気付いた。
みんな、それぞれ自分の時間を過ごしていた。
次第に収まってくる胸のドキドキ。
でも、周りをキョロキョロしていたら、偶然こちらを向いた人と目が合って……。またオレの胸は大きく跳ねた。
思わずパッと俯くと、その目が合った人の声が聞こえる。
「ねぇ、見て!あの子ーー……」
その声に、また何か言われると思って、瞼をギュッと閉じた。けど……。
「ーーすごく綺麗!
異人さんかな?それとも色素が薄いのかな?!瞳もガラス玉みたいでめちゃくちゃ羨ましいんだけど!」
ーー……え?
綺麗、羨ましい……。そんな言葉に、驚く。
その後も、すれ違ったりする人は特にオレの事を見たりしなければ、時折振り返る人が口にするのは容姿を褒めてくれたり、珍しがったりするだけで、「気持ち悪い」とか不気味がる人はいなかった。
響夜の、言う通りだーー……。
オレが勝手に"魔物である自分"に過敏になって、卑屈になっていただけだった。
「……っ、響夜。ありが……」
「ーーオイ、この店入るぞ!」
オレに大切な事を教えてくれた響夜。
今度こそちゃんとお礼を言おうと思ったのに、オレの言葉は遮られてしまった。
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