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番外編 響夜side
1-8
しおりを挟むもう一度会うまでは死ねない。
約束を果たすまでは死ねないーー。
二人の笑顔をもう一度見たくて。
あの、幸せな場所に帰りたくて、僕は過酷な生活を耐え抜いた。
けど。
15歳になった僕が本部の施設に戻った時。そこにサクラとサクヤの姿はなかった。
施設の医師にも、研究員に聞いても誰も何も知らなくて……。親父からただ一言、「この施設から逃げ出した」と伝えられた。
この施設が、サクラやサクヤにとって良い居場所ではない事は分かっていた。
親父は僕にでさえ全て本当の事を語っているとは考えられなくて……。きっとサクラは、自分が何故ここに置かれているのか。または、自らの真実を知って逃げ出したに違いない、と思った。
仕方ない、と思った。
でも、
僕は、何の為に頑張ってきたんだろうーー……?
僕の心に、そんな感情が生まれてしまった。
待っててくれる、って……約束は?
あの約束が、自分にとって何よりも支えだった。
どんなに辛い時も、逃げ出したくなる日々も、サクラとサクヤと交わしたあの約束があったから耐えられた。それ、なのにーー……。
「……大事に想ってたのは、僕だけか」
どうしようもない虚しさと哀しさが、溢れ出した。
待っていてほしかった。
僕の事も一緒に連れて行ってほしかった。
ずっとずっと、一緒に居てほしかったーー!!
置いていかれた。
そんな絶望と失望の気持ちが、僕の事を捻じ曲げていった。
人としての心はヒビ割れて、そこに身に宿していた鬼響の邪の怨念が侵食して……。僕は、親父の命令だけを生き甲斐に生きる操り人形のような存在になった。
……
…………そんな僕がサクヤと再会したのは、7年後。22歳の時だった。
17年振りに目にするサクヤは、赤ん坊の時の面影を残すサクラそっくりに成長していた。
が、その姿が余計に僕の邪心を掻き立てる。
可愛さ余って憎さ百倍ーー。
まさにその言葉通りで、僕はサクヤに憎しみをぶつける事しか頭になかった。
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