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番外編 響夜side
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しおりを挟む流れるような、亜麻色の長い髪。
潤んだ薄水色の瞳に三日月を映していたその姿が、僕に人としての心を与えてくれた。
それは、まだ三つの頃だった。
三つ、と言っても僕の場合は生まれて三年、と言う意味であって、動物や魔物が生まれて数ヶ月で独り立ちするように、見た目は三歳児だが、内面はそれよりも遥かに上だった。
生まれた時から母親はおらず、自分を出産した際に死んだ、と聞かされていた。
父親は、自分が住んでいる施設で1番偉い橘 涼夜。
だからだと思ってた。
施設に居る人達が、自分の事を可愛がってくれたり、優しくしてくれるのは……。
でも、ある日僕は知ったんだ。
自分にみんなが良くしてくれるのは、父の息子だからではなく"魔物の血を引く恐ろしい存在"だから。
つまり、人じゃないから、僕が秘めた恐ろしい力を持つ存在だから、殺されないように機嫌を伺っていただけだったんだ。
自分は普通の人間じゃないーー。
そう自覚したら、そこからはもう、化け物としての力が溢れ出す日々だった。
異常なまでに働く五感、並外れた力に素早さ、身体能力……。下級の魔物ならば、魔器なんてなくとも素手で倒せる程の力だった。
その力を目の当たりにして、上辺だけでも装って近付いてくる人間すら確実に減って行った。
変わらないのは親父と、数人の親父直属の選ばれた部下達だけ。
触れるだけで命が奪われるーー。
あまりの強さにそんな噂が広まって、僕は"悪魔の子"と呼ばれるようになり、誰とも触れ合う事がなくなった。
……別に、どうでも良かった。
たった一人、喜んでくれる人が居たからだ。
父親の涼夜だけは、僕の恐ろしい力を認めて、強くなる度に褒めてくれた。
親父だけでいい。
この居場所だけあれば、それでいいーー。
そう思っていた。
だから、「被検体の人型魔物が、親父の子供を身籠った」って聞いた時は、心臓と居場所を奪われる程の衝撃だった。
人型魔物、「サクラ」が親父のお気に入りである事は知っていた。けど、自分とは違い、全く戦闘能力を持たない「サクラ」を、これまではさほど意識する事はなかった。
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